対決
(投稿者:東京都・あびこ みゆし)
──では、一番最初に絵をあげてくれた寺田さんから今回の設定を……。

寺田 | 今回はiPadで全部描きました。 |
これは、あまりの衝撃に象が浮いちゃった、 | |
という絵ですね。で、浮いた時間が3時22分。 | |
五月女 | へぇ~。 |
小岐須 | これはテレビなの? |
寺田 | 心のテレビですね。象も浮くくらいの衝撃を受けている誰かの。 |
小岐須 | 俺は「象が飛んじゃった」ってニュースが流れてるのかと思った。 |
寺田 | 象自体は一目惚れと関係なくて、アフリカにいるただの象。 |
で、世界のどこかにいる誰かの一目惚れの衝撃が伝わって、 | |
勝手に浮いちゃったんでビックリしてるんですよ。 | |
「なんで、オレは浮いてるんだ!?」って。 | |
小岐須 | あはははははははは! |
バタフライ効果的な(笑)。全然、思ってたのと違ったよ! | |
寺田 | 学校でヒロシがヨーコちゃんに惚れた瞬間、 |
その瞬間にアフリカで、象が一瞬10センチ浮いて落ちて | |
「えーっ!?」となっていた……という絵ですね。 | |
衝撃の大きさは象クラスだった! | |
で、一目惚れなんで、象は一瞬バッとカラフルになってる。 | |
五月女 | 毛も立ってますもんね。 |
寺田 | そう。関係ないけど象は意外と剛毛なんですよ。 |
触るとザラザラしてて。 | |
小岐須 | これ、なんで右耳が黄色いんですか? |
寺田 | 耳だけでなく、恋の衝撃だから全体的に一瞬、 |
バッとカラフルになってるんですよ。 | |
五月女 | そっか。前回のまーくんへのオマージュかと思った。 |
寺田 | 違うんですよ。 |
小岐須 | え?なになに? |
──前回、耳だけ青い人物を描いてたじゃないですか。
小岐須 | あーっ、そういうことか! |
寺田 | まあ、だから、カラフルになった瞬間の絵ですね。 |
本当は誰が一目惚れをしても、アフリカの象が | |
どれか一匹は飛び上がってるんですよ。 | |
五月女 | 知らない~(笑)。 |
寺田 | そう、みんな見たことがないから知らないだけで、 |
たまたま、その一瞬をとらえてしまった絵です。 | |
だから、みんなも一目惚れした時に、 | |
象が飛んでるんですよ。まあ、サイの人もいるし、 | |
衝撃の度合いで動物の種類は変わるんですけど。 | |
小岐須 | じゃあ、ヨーコちゃんに惚れた |
ヒロシの衝撃はすごかったわけだ(笑)。 | |
寺田 | もう、すごい衝撃。たぶん、一生涯惚れてる感じの。 |
「ホワァッ!!」みたいな。そういう、みんなが | |
知らない事実を今回初めて絵にしてみました。 | |
五月女 | すごいですね~(笑)。 |
小岐須 | 今回は初めて多摩川が関係ないんじゃないですか? |
寺田 | …………。 |
小岐須 | まさか、多摩川の高校の子……とか? |
寺田 | もちろんです。 |
五月女 | 多摩川かー(笑)! |
小岐須 | あはははははははははは! |
寺田 | 多摩川の高校に通っているヒロシが、今まで全然 |
気にしてなかったクラスメイトのヨーコちゃんに、 | |
ある日、ふとした瞬間に一目惚れしてしまったという。 | |
そういう絵ですよ、シンプルに。 | |
小岐須 | 俺は象が一目惚れして浮いちゃってるんだと思った。 |
寺田 | 現地の人たちは、そういう解釈をしているかもしれないね。 |
五月女 | そういう現象がアフリカでは多発しているわけですもんね。 |
寺田 | 必ず起こってる。でも湖のなかで鯉が |
ちょっと上に動いてるだけかもしれないし、 | |
アリがちょっと浮いただけかもしれない。 | |
だから、気づかれないことも、いっぱいあるんですよ。 | |
五月女 | アリか~っ(笑)。 |
寺田 | 小っちゃい、ふとした恋心だとね。 |
五月女 | 3時は朝ですか? |
寺田 | 昼ですね。たぶん、下校前にドキッとしたんじゃないですかねえ。 |
やっぱり、一目惚れは突然くるじゃないですか。 | |
なんとも思ってなかったのに、突然ふとした仕草や会話で……。 | |
ありませんでしたか?「なんか……気になる!」って。 | |
小岐須 | いや、ありましたよね……(遠くを見つめながら)。 |
寺田 | ちなみに、これは熊本に向かう新幹線のなかで描きました。 |
そして、そのまま新幹線のなかから送りました! | |
五月女 | いいな~。 |
寺田 | いいだろう、iPad! |
五月女 | iPadでここまで描けるんだ。 |
寺田 | Procreate(※iPad用の描画アプリ)で描きました。 |
五月女 | へぇ~。でも、克也さんの設定は深かったですね。 |
寺田 | やった!次は誰? |
──あがった順番で言うと、五月女さんですね。

寺田 | これ、すごく良いよね。 |
誰が見ても「わかる」もんねえ。素晴らしいよね。 | |
五月女 | 前回がクイズだったので、わかりやすく(笑)。 |
寺田 | 誰も望んでないクイズね(笑)。 |
真ん中のハートの穴は心臓? | |
五月女 | これは『蜘蛛巣城』をやりたくて。 |
寺田 | 黒澤明の?なるほど、なるほど。 |
小岐須 | 矢がドドドドドッてやつね。 |
五月女 | そうそう。キューピッドの矢が |
ドドドッときて、ハートの穴が開いた。 | |
寺田 | やっぱ浮いてるね。 |
五月女 | 一目惚れの衝撃だから浮くよね、やっぱり。 |
小岐須 | この、下の氷みたいなのは? |
五月女 | これは女性のバイオリズムですね。 |
小岐須 | !? |
寺田 | !?? |
五月女 | バイオリズムの折れ線グラフ。浮き沈みが激しいですね(笑)。 |
小岐須 | あはははははははは! |
その設定、いま、つくったんじゃねえの(笑)! | |
寺田 | あっ!オギス!いま、つくったとか言うなあ!! |
ここでなにそのセリフ!ルール無視してる感じの! | |
小岐須 | ごめん、ごめん、最初から考えてたよね(笑)。 |
五月女 | 考えてますよー。 |
寺田 | そうですよ、考えてますよ!……いや、でも面白いですね。 |
ツンドラかと思った。ツンドラのように冷えた心が | |
一目惚れによって暖まったのかと思ったよ! | |
小岐須 | 俺も氷山が溶けてるのかと思ったよ。 |
五月女 | あ~、そっちか~。 |
──ハートの奥に見えているのは何でしょう?
五月女 | ここはね、上は空ですね。このへんは、まあ、 |
「空とかいいんじゃない?」みたいな感じで(笑)。 | |
寺田 | ここは風景なの? |
五月女 | なんか、ダリっぽくしたかったの。 |
寺田 | なるほどね(笑)。『蜘蛛巣城』であり、 |
ダリであり、バイオリズム!五月女、想像を越えてくるな〜。 | |
五月女 | けど、わかりやすさは失われてないでしょう? |
寺田 | 発想はわかりにくかったけどね! |
小岐須 | 女の子の髪型もすごいね。 |
五月女 | 女の子は描くのが恥ずかしいんですよ、自分と思われると……。 |
寺田 | 思わないよ! |
──ちょっと魔法少女っぽいですよね。クリーミィマミ的な。
小岐須 | ああ、髪の毛の色味がね。 |
寺田 | まあ、でも恍惚の表情を浮かべてますよね。 |
やっぱり内面にある欲望が……。 | |
五月女 | ふふふ。でも、他は私じゃないけど、足だけは私です。 |
興奮すると親指が上がるんですよ。 | |
小岐須 | あはははははははは! |
寺田 | 恍惚の表情でね! |
五月女 | 『少林サッカー』で、キスされて足がピーンとなる |
シーンがあるんですけど、あんな感じですね。 | |
小岐須 | 『少林サッカー』も入ってるのかよ! |
寺田 | すごいな~。イメージソースが豊かだなあ。 |
五月女 | ただね……『蜘蛛巣城』は観てないんですよ(笑)。 |
トークしに来るまでに観ようと思ってたんですけど。 | |
寺田 | あれは凄いシーンですよ。 |
小岐須 | 本物の矢を使ってるんですよね。 |
寺田 | そうそう。でも、そのシーンまではゆっくりした |
映画なんで寝るかもしれないね、4歳児が。 | |
五月女 | 4歳児、観れるかなあ(笑)。 |
このあいだ娘に小津映画を観せてみたんだけど、 | |
途中で飽きてました。「おならの映画だよ!」って、 | |
『お早よう』を観せたんだけど。 |
──子供が観るには淡々としてますかねえ(笑)。では、そろそろ小岐須さんの設定も伺いましょうか。

寺田 | 可愛い。 |
五月女 | ねえ。オシャレ。 |
小岐須 | これは原子核みたいなイメージというか、 |
一目惚れのせいで、心を捕らわれてる。 | |
だから、「ハァ♡」っていうよりも、 | |
「やべぇ、捕らわれちゃった……」 | |
(険しい顔で)みたいな感じなんですよ。 |
──「ハァ♡」って顔じゃないですもんね。
寺田 | ねえ、憮然としてるよね。このコが一目惚れしてるの? |
小岐須 | うん、このコが一目惚れ。 |
五月女 | メイク、濃いめじゃないですか。 |
寺田 | 濃いめだよね。 |
──これは、一目惚れを認めたくない感じなんですか?
小岐須 | そうっすね。誰しも認められる一目惚れと、 |
そうじゃない一目惚れがあると思うんですよ。 | |
寺田 | そうなの?「こんなヤツに!」って? |
五月女 | そんな酷いヤツに一目惚れしちゃったの(笑)。 |
寺田 | 「斉藤に?まさか、私があの斉藤にっ……!」みたいな? |
五月女 | あははははは。 |
小岐須 | まあ(笑)、そういう一目惚れの時の心象風景ですね。 |
寺田 | ちょっとヤンキー漫画入ってるよね。 |
髪型がヤンキーっぽいからかな。 | |
メイクも濃いし、これ、族入ってるんじゃないの? | |
五月女 | ね~、族入ってるよ~。 |
小岐須 | いや、ちゃんとしたお嬢さまなんですよ。 |
寺田 | どこの国のお嬢さまだよ! |
小岐須 | まあ、どこかの国の(笑)。 |
寺田 | 多摩川じゃないんだ。 |
小岐須 | 俺、多摩川設定ないから(笑)! |
寺田 | ニューヨーク? |
小岐須 | ニューヨークじゃない(笑)。 |
──女の子の髪型がクルクルしてるのには、何か理由があるんですか?
小岐須 | おてんばなお嬢さまなんで。 |
寺田 | おてんばはクルクルなんだ。おテンパーなんだね。 |
五月女 | やっぱり、昔のドラマに出てくるヤンキーっぽいよね。 |
小岐須 | ヤンキーじゃないです(笑)。 |
寺田 | そうなんだ?ショック! |
五月女 | じゃあ、なんかの映画のオマージュでさ……。 |
小岐須 | なんで、俺まで五月女みたいな描き方になってるんだよ(笑)! |
寺田 | 『青い山脈』とかさ。 |
小岐須 | オマージュしてないよ!どこらへんが! |
──むしろSF的なイメージですよね(笑)。
寺田 | オギちゃんはSFだよね。 |
小岐須 | 克也さんだってそうじゃん。 |
寺田 | オレ今回違うもん。オレは『野生の王国』派。 |
五月女 | ちなみに、これは朝、昼、夜? |
小岐須 | まあ、昼っすね。 |
寺田 | このカゲの落ち方を見ると、 |
高いところに陽がある感じはするよね。 | |
で、これは浮いてるの? | |
五月女 | やっぱり浮いてるよね? |
小岐須 | 浮いてるというか、地面が無いんですよ。 |
自分のなかの世界なんで。 | |
「フアァァッ!」みたいな世界なんで。 | |
寺田 | それ、声だけじゃん(笑)。 |
五月女 | この環っかは赤い糸? |
小岐須 | いや、違うんですよ。 |
五月女 | じゃあ、土星のアレ? |
小岐須 | そうそう、きっと心の「土星の環」ですよ。 |
ほら、一目惚れの衝撃って言っても、 | |
「ドーン!」とか「ハァ♡」だけじゃないからさ。 | |
寺田 | ジワジワ系だ。 |
小岐須 | そう、静かにジワジワくるのもあると思うからさ。 |
寺田 | 笑撃? |
小岐須 | いや、「笑」とかじゃねーから! |
寺田 | 惚れちゃった~。笑える~。 |
五月女 | 違うんだ。 |
──あ、ほら、五月女さんも寺田さんも環っかを描いてくれてますよ。


──この環っかはどんどん増えていったりするんですか?
寺田 | 恋をするごとに? |
小岐須 | まあ、そうですね。あとは、その人への気持ちの度合い、 |
捕らわれ具合が環っかの数に現れる、 | |
というのもありますね。まだ、環っかで全身が | |
見えなくなってるわけじゃないから大丈夫。 |
──でも捕らわれないように、という葛藤が表情に見えますね。
小岐須 | まあ、不本意なので。一目惚れを認めたくないから。 |
五月女 | ちょーダサい男に恋しちゃったのかな。 |
寺田 | 斉藤ね。斉藤、アニメ好きなんだよね。 |
新番組を全部チェックして | |
「今シーズンのアニメに観るものは無いな」とか | |
言ってるヤツに……。? |
──なるほど(笑)。みなさん、結果的に、モノではなく人に恋した瞬間を描いてくれましたね。
寺田 | そうですよ~。 |
小岐須 | 斉藤が人かどうかはわかりませんけどね。 |
寺田 | ホントだ!カブトムシかもしれないね、吉田戦車的に。 |
五月女 | ホントだね~(笑)。 |
──確かにカブトムシだったら禁断の恋ですから、不本意な一目惚れですよね。
小岐須 | まあ、人かどうかはご想像にお任せします! |
寺田 | カブトムシかもしれないのかあ。なるほどなあ。勉強になるな~。 |
五月女 | 勉強になるな~。 |
──今回のお題は描いてみてどうでしたか?
寺田 | 絵だなあと思いました! |
いや嘘です。まー、どのテーマでも毎回フラットに | |
先入観なく接して、浮かんできたものに目を開く! | |
そういうことなんじゃないですかね。 | |
五月女 | 素晴らし~(笑)。 |
小岐須 | 横山大観みたいだよね。 |
寺田 | 顔が似てるんでしょ?オレは顔を知らないんだけどね。 |
小岐須 | 似てる、似てる。髪がウェービーなら似てる。 |
寺田 | 伸ばすとウェービーではあるんだよ。 |
──でも、今回は3人とも本当に可愛かったです。
寺田 | やっぱり一目惚れの絵だからねえ。 |
一目惚れって性欲も含まれるのかな。 | |
「ヤリてー」みたいな。 | |
小岐須 | 一目惚れの要素のなかには入ってるよね。 |
寺田 | だって、自分でもわかんない時があるもんね。 |
五月女 | 「ヤリてー」かどうかが? |
寺田 | その気持ちが恋なんだか性欲なんだか、 |
あるいは、もともと恋と性欲が一緒なんだかさ。 | |
五月女 | 別なのかな? |
寺田 | 別ってこともないと思うんだけど。人間だもの。 |
小岐須 | 相田みつをも入ってるじゃん(笑)。 |
五月女 | 私、一目惚れってあんまりしないなあ。 |
寺田 | 気持ちを押し殺してきたんじゃないの。 |
──長く一緒にいるうちに、だんだん好きになっていくタイプですか?
寺田 | 相手が好きになってくれるから好きになる、 |
というタイプの人もいるよね。 | |
小岐須 | 女の人は、そういうタイプ多いよね。 |
五月女 | うーん……でも、惚れっぽいは惚れっぽいよ。 |
寺田 | 一目は無いんだ。二目?十目?え、見た目派?見た目惚れ? |
五月女 | いやー、でも一目惚れっていうのは見た目じゃないですか? |
寺田 | 見た目というよりは、仕草だったりもするじゃないですか。 |
あとは制服だと何とも思わなかったけど、 | |
ワンピースで一目惚れしたとかあったよ、子供の頃にね。 |
──ギャップ萌え的な。
寺田 | そうそう、違う一面が見えてね。 |
固定観念が破壊された時に恋が生まれるんじゃないの。 | |
だって人間だもの! | |
五月女 | 今日だけ、すっごい人間だな〜(笑)。 |
小岐須さんラクガキ

小岐須さんのラクガキ:五月女さん、寺田さんの環っかラクガキを受けて(?)、小岐須さんの描いた女の子の頭部にも環のような装飾が……。
寺田さんの絵が完成するまでの早送り動画
iPad用の描画アプリ〈Procreate〉で試し描き




五月女さんのCG挑戦動画