対決
(投稿者:ミミズク)
──今回のテーマは「銀河新聞 東京版 20XX年11月15日の三面記事」です。そして連載開始から二度目となるSkypeトークです。個展のため、寺田さんはまたも日本にいません!


Giant Robot Presents:
Return of the Hot Pot Girls by Katsuya Terada/11月15日~12月3日
寺田 | はい、今回はですね、LAからお送りしております! |
五月女 | おしゃれ~。 |
寺田 | LAがおしゃれとか言ってんじゃねーよ! |
五月女 | 私、雰囲気で言ってるだけだから(笑)。 |
寺田 | まったくだよ! |
はい、じゃあやりましょうか。 | |
今回はケイ子からやっちゃおうか! | |
五月女 | ケイ子からやっちゃう? |

小岐須 | 今回のケイ子の絵はどういうことなのかと! |
寺田 | オレは絶句したよ! |
小岐須 | 俺も絶句したよ(笑)。 |
寺田 | 本当にすごい衝撃を受けましたよ。 |
これは一体……(笑)。まず、語ってみてください。 | |
五月女 | え?語っちゃうの?何に衝撃を受けたの? |
ええと、ホントはもうちょっと、新聞っぽくしたかったので、 | |
文章つけたバージョンも描いたりしたんですけど、 | |
あまり限定するのも面白くないと思って。 |
──色々アイデアを出した末に、この絵に辿り着いたってことですよね?
五月女 | そうですね。台風の時に、田んぼの様子を見に行って |
亡くなっちゃうおじいちゃんについて描こう、 | |
というのは最初に決めていて。あとは見せ方の問題ですね。 | |
寺田 | なるほど。銀河新聞についてはノータッチだ。 |
五月女 | あ… |
小岐須 | 未来でも、おじいちゃんは田んぼに行くと(笑)。 |
寺田 | これ、そもそも三面記事ですか? |
これは……呼びかけですよね? | |
五月女 | 「行かないで」っていうシンポジウムが |
開催されたという記事は、やっぱ、三面でしょ? | |
寺田 | あ、なるほど。シンポジウムが開催されたニュースなんだね。 |
五月女 | そう。「田んぼの様子を見に行かないで! シンポジウム」! |
寺田 | ああ、わかってきました(笑)。 |
五月女 | 新聞だったら普通、シンポジウムの会場の写真じゃないですか。 |
それも描いてみたけど、絵的に面白くないから、 | |
ゆるキャラにしちゃいました。 | |
寺田 | 面白くないかなあ。 |
小岐須 | 五月女なら面白く描けたんじゃん? |
ハゲのおじさんとか、いっぱい描いてさ。 | |
五月女 | そうだよね~。 |
寺田 | でも、これにしちゃったよね~。 |
五月女 | しちゃったね~(笑)。 |
小岐須 | なるほどねえ(笑)。 |
五月女 | …………。 |
寺田 | ん?それで語りは終わりかい? |
五月女 | えーと……うん。 |
小岐須 | えぇっ!? |
寺田 | なんかヤルキを感じないなあ(笑)。 |
五月女 | そんなことないよ!すっごい考えましたよ! |
みんな、三面記事じゃないって言いたいわけでしょ? | |
小岐須 | いや、そういうことじゃなくてさ(笑)。 |
五月女 | 手抜きって言いたいのか? |
ネタ先行だと、絵描くときに困ってしまって。 | |
実は、色塗ったパターンも描いてたり…手は抜いてないよ!(笑) | |
寺田 いや、手を抜いたとは思ってないですよ。 | |
手を抜くなら、普通この絵は描かない(笑)。 | |
逆に、手を抜いてこの絵なら凄いよね。 | |
この連載、もう終わるかもしれない。 | |
五月女 | えーっ! |
寺田 | いや、だから、これはやられたな、と思った。 |
五月女 | いいですよ、ダメ出ししてもらって。 |
寺田 | いやいや、そんな。 |
ダメ出しするような仲ではないじゃないですか。 | |
五月女 | そうだよね。傷を舐め合う仲だよね(笑)。 |
小岐須 | そっちか(笑)!いや、俺は「銀河新聞」っていう |
子供新聞なのかと思ったんだよね。 | |
五月女 | あー、そっか……銀河新聞のこと、まったく考えてなかった。 |
寺田& 小岐須 |
(爆笑) |
五月女 | とにかく田んぼの様子を見に行くご老人について描きたくて。 |
──五月女さんが気になっていたトピックスだったわけですね。
五月女 | はい、気になってたんで。 |
寺田 | おじいちゃん心配だよねえ。 |
五月女 | ねえ。色々大変らしいですよ。 |
水門を閉める加減が難しいらしくて。 | |
やっぱり見に行かなきゃいけないんだって。 | |
寺田 | 堤防に手をつっこんで洪水を堰き止めたりね。 |
五月女 | 本当は自動水門閉めシステムができればいいんだけどねえ。 |
それで、この問題に対する警鐘をね。 | |
小岐須 | 怒りを社会に訴えてるんだ。 |
五月女 | そう、訴えてます! |
寺田 | 大事だよね~。 |
小岐須 | 佐藤二朗みたいだな、さっきから(笑)。 |
──でも本当に新境地に辿り着いた感じはしますよね。
五月女 | 普段のラクガキだとこんな感じなんですけどね。 |
そして、ゆるキャラに対する警鐘も鳴らしてね。 | |
ほら、最近なんでもかんでも、 | |
ゆるキャラをつくる傾向があるでしょ。 | |
寺田 | あるよね~。 |
五月女 | でも、ゆるキャラのデザインはしたくないですか? |
小岐須 | え、どっち? |
警鐘を鳴らしたいのか、デザインしたいのか(笑)。 | |
五月女 | 今度、ゆるキャラをテーマにしましょうよ。 |
克也さんの絵でゆるキャラ描いたら面白そう。 |
───あ、何ですか。これはゆるキャラですか?

(※下方に別のラクガキが描かれているため、部分アップでお届けします。全体図は後ほど!)
寺田 | 田んぼの様子を、みにこいやっ!! |
五月女 | とろけてる……。 |
寺田 | ゆるいから。まあ、「もう、ゆるキャラやめようよ」って |
みうらじゅんさんに言ってほしいわけですよね。 | |
五月女 | みうらさんは、無意識にゆるくデザインされたものに突っ込む、 |
というスタンスでしたけど、 | |
もう意図的につくられちゃってますもんねえ。 | |
寺田 | そうですよねえ。 |
「ゆるキャラ」をつくろうとしちゃってるからなあ。 | |
って、こんな話をする集まりでしたっけ? | |
小岐須 | なんか、よくわかんない真面目な方向にいこうとしてるけど。 |
五月女 | 今回のテーマだとそうならざるをえないですよね。 |
きっと、みなさんの絵にも様々なメッセージがね…… | |
(と、小岐須さんを見る)。 | |
小岐須 | なにそれ、フリ!? |
──じゃあ、せっかく「フリ」をいただいたので、小岐須さんいきましょうか。

小岐須 | 今回のお題は20XX年でしょ?でも「西暦」って書いてないじゃん。 |
だから新暦の20XX年でもいいわけじゃないですか。 | |
これは新暦ですごい未来だから、 | |
人間がこんな状態になっちゃってるわけですよ。 | |
寺田 | 人間なんだ、これ! |
五月女 | ゆるキャラだね! |
小岐須 | どこが(笑)!これは左側が沖縄県民で、右側が長野県民。 |
このふたつは長寿県ってことにプライドを持ちすぎちゃって、 | |
どうにか長生きするために身体を変えちゃったんですよ。 | |
それで沖縄は海洋生物的な進化をして、 | |
長野はロボット化しちゃった。 | |
そのふたつの県が物産展をやっている時の1コマですね。 | |
長寿県同士で何かやろうってことで。 | |
寺田 | 物産展だったのか~。それは意外だったな~。 |
小岐須 | 長寿県同士で、追いつけ追い越せでやってきたけど、 |
もうやめようと。ウチら、ここまでおかしくなっちゃったじゃん、 | |
仲良くやってこうぜ、って。 |
──なるほど(笑)。長野県民のロボットの中身には何が入ってるんですか?
小岐須 | 内臓と脳みそですね。長寿だけを考えて生きてきたんで、 |
見てくれはもういいだろうと。 | |
五月女 | じゃあ、この人たちは結構なトシなの? |
小岐須 | もう200歳とかですよ。 |
五月女 | じゃあ、おじいちゃんおばあちゃんなの? |
小岐須 | いや、そう簡単には死なない |
身体になってるから200歳でも若い。 | |
寺田 | へ~。セックスはどうしてるんですか? |
小岐須 | いや、ちゃんと盛んですね。 |
──内臓しかないのに?
小岐須 | でも精巣はちゃんと残ってるから。 |
ただ長寿第一なんで、子孫を残すことより自分たちが | |
長生きするほうに気持ちがいっちゃってる。 | |
なので子供は減少する傾向にあるんですけど。 | |
寺田 | なるほどね~。そこは社会問題もはらんでいると。 |
小岐須 | そうですね、長生きに固執して、 |
ここまでしていいんだろうかと。 | |
五月女 | そこは警鐘を鳴らしてね。沖縄と長野の子供はどうなんですか? |
小岐須 | いや、そこは交ぐわってないから。 |
五月女 | 禁止されてるの? |
小岐須 | というか、いがみあってたから。 |
でも今回の物産展で和解したんでね。 | |
沖縄と長野って、本当に世界トップの長寿なんですよ。 | |
そもそも日本の平均寿命が世界で一番高くて、 | |
そのなかで沖縄と長野が一位を争っているらしい。 | |
で、長野がなぜ長寿かというと、ストレスを感じにくい | |
性格の人が多いという説があるらしいですよ。 | |
五月女 | そうなんだ~。この物産展の中身が気になるよね。 |
寺田 | 本当だよね。何売ってんの? |
小岐須 | まあ、おやきとかね。 |
五月女 | そこは今と変わらないんだ(笑)。 |
小岐須 | そこを変えたらマズいと思うんですよね。 |
ずっと食べてきたものを変えたら、 | |
たぶん長寿じゃなくなっちゃう。 | |
五月女 | 沖縄はやっぱり豚の血を飲んでるのかな? |
小岐須 | どうですかね。沖縄は気候的に良いからね。 |
あと、ルーズな県民性らしいよ。 | |
みんな細かいことを気にしないから、 | |
三時半に待ち合わせと言ったら、家を三時半に出るんだって。 | |
寺田 | なるほど、なるほど。それは我々の〆切のようなもんだね。 |
小岐須 | 〆切の日に描くっていうね。 |
寺田 | ちょっと、いたたまれない気持ちになってきたね。 |
五月女 | でも長生きできるってことだね! |
小岐須 | だから〆切をあまり守っても長生きはしないっていう、 |
自分自身へのアンチテーゼでもありますね。 |
──いやいや、〆切は守っていただかないと困りますよ!
寺田 | いえ~い。 |
五月女 | でも、物産展だったとはなあ。 |
寺田 | ねえ、面白かったですよ。 |
小岐須 | だから、天井のところがちょっと鉄骨めいてるでしょ? |
五月女 | 言われてみれば本当だ~! |
小岐須 | 特設会場だからね。この奥にちゃんと物産展がある。 |
五月女 | この時代の東京の人はどんな感じなんですか? |
小岐須 | 普通に人間です。いろんな人が住んでいる時代なんですよ。 |
なので国内の移動にもパスポートが必要なんですけど。 | |
まあ、俺のはそんな感じですね。 | |
じゃあ、克也さんいきましょうか。 | |
寺田 | 何を~。 |
小岐須 | 何をじゃなくて(笑)。 |

寺田 | この人はね、顔が3つあるじゃないですか。 |
だから、どの記事を読んでも三面記事になるんですよ。 | |
小岐須 | ……(しばらく考えて)そこ(笑)!? |
五月女 | あ~っ、なるほどね(笑)! |
寺田 | もう何を読んでも三面記事になる人が見つかった、 |
という三面記事ですよ、多摩川でね。 | |
小岐須 | また多摩川(笑)。これは前回の象とは何か関係があるんですか? |
寺田 | 関係があるとも言えるし、無いとも言えるね。 |
──この記事のなかに小岐須さんに似ている人の顔がありません?

小岐須 | これ、俺が逮捕されたとかなの? |
寺田 | それは気のせいでしょうねえ。 |
小岐須 | 気のせいなんだ。どう考えても俺ですよね(笑)。 |
──左側の「解散」っていうのは? MKKと書いてあるような……。
寺田 | これはMMKなので別の団体ですね。 |
だから我々には関係ないですね。 | |
で、もう言うべきことは終わってしまいましたね。 | |
小岐須 | え? 早くない? この三面の人の話は? |
寺田 | ああ、この人は世が世ならば阿修羅様ですね。 |
でも、今となっては人間に忘れられてね、 | |
普通に多摩川の一軒家に住んでるんですよ。 | |
まあ、もう仕事をするでもなく、毎朝新聞を読んでね……。 | |
五月女 | あ、急須の口もちゃんと3つありますね、すごい! |
これ、3人それぞれ何かキャラ設定はあるんですか? | |
寺田 | いや、オレもあまりこの人のこと知らないんで。 |
なんせ、三面記事で知っただけなんでね。 | |
顔を見ていると、それぞれに何かありそうですけど、 | |
でも別々のようでいて三面とも | |
同じ人格だったりするんじゃないですか、阿修羅様だから。 | |
小岐須 | 他の八部衆はどうしてるんですか? |
寺田 | 散り散りなんじゃないですか。仕事がないからね。 |
小岐須 | じゃあ、平和ってことですか? |
寺田 | ……わからないですねえ。 |
小岐須 | なるほどねえ(笑)。 |
五月女 | これは黄色い顔の人が新聞を読んでいるところで、 |
このあと順番に他の2人も読む感じなんですか? | |
寺田 | いや、みんな一斉に見てるんですよ。 |
もう常に三面記事ですからね。テレビ覧を見ても三面記事! | |
五月女 | そっか~(笑)。記事に関して |
3人で話しあったりはするんですか? | |
寺田 | 3人というか、ひとりなんでねえ。 |
頭のなかで3つの記事が1つに見えるというね。 | |
まあ、我々凡人には、なかなか理解しがたい状況ですね。 |
──ちなみに、この絵の時代設定は?
寺田 | 今ですよ、あたりまえじゃないですか! |
五月女 | 現代なんだ(笑)。 |
──じゃあ、多摩川近辺に行けば阿修羅様に会えるってことでしょうか(笑)。
寺田 | そうですよ。 |
──ご利益がありそうですね。
寺田 | ご利益は無いんじゃないですか。 |
もう市井の人間として生きてるんで。 | |
五月女 | じゃあ、普通にスーパーとか行くんですか? |
寺田 | 行ってるみたいですよ。そこで見つかって |
三面記事になったんですから。 | |
「阿修羅の末裔がいた!」って。 | |
もう、本人自身も三面記事だし、本人が読んでも三面記事だし、 | |
なかなか多面的な構造になってますね。 | |
小岐須 | あははははははははははは! |
五月女 | この人たちは自分の記事を |
どういう気持ちで読んでるんですかね。 | |
寺田 | それはやっぱり、三面記事だな~って。 |
別に記事になるようなことしてないけどな~、 | |
と思いながら目玉焼きトーストを食べてるわけですよ。 | |
五月女 | 目玉焼きトースト美味しそう。 |
寺田 | これは宮崎駿リスペクトですね。 |
この人たち、パズーが大好きなんですよ。 | |
五月女 | じゃあ、映画館に駿作品を観に行くんですか? |
寺田 | いや、観には行かないんじゃないですか。 |
DVDか地上波ですね。 | |
五月女 | そっか~(笑)。 |
寺田 | ……。 |
小岐須 | あれ、克也さん! |
寺田 | ……。 |
五月女 | あれ? 回線切れた? |
寺田 | ……あ、切れてましたよ! |
ネットの切れ目が縁の切れ目かな。 | |
五月女 | あはははは。 |
小岐須 | いやいやいや(笑)。 |
寺田 | もう、お互いの映像出すのやめましょうか、 |
重いから。なんかラジオっぽくなってきた! | |
五月女 | なんか一曲流す? |
寺田 | コッキーポップ! |
五月女 | それ、なんですか? |
寺田 | わ~すれ~て~しまいた~い~こ~とや~♪ |
古いっ! これは高校生くらいの時に聴いていたラジオ番組ですね。 | |
円広志の「とんで とんで とんで~♪」っていう | |
アレがテーマ曲でしたね。 | |
まあ、本当にどうでもいい話ですね。 | |
小岐須 | 俺はその頃、アニメトピアを聴いてましたね。 |
田中真弓さんがパーソナリティをしたりしていて。 | |
寺田 | パズーの声じゃないですか! |
──繋がりましたねえ。
寺田 | まあ、それはいいとして……どうですか。 |
この「俺たち!ピラミッド!」の現時点での総括をね、 | |
何か無いのか、君たち。 | |
小岐須 | 結構、あっという間でしたよね。 |
五月女 | ねえ。私、今日のヤツどうしよう。 |
本にする時は描き直したほうがいいのかな。 | |
小岐須 | 描き直しアリなんですか? |
五月女 | だってラフのほうがちゃんとしてるくらいだし(笑)。 |
小岐須 | えーっ! |
寺田 | ケイ子はどう思ってるんだよ、 |
「俺たち!ピラミッド!」のこと。 | |
五月女 | え~? ……実験の場(笑)? |
──楽しんで描いていただくのは、いいことだと思います。
寺田 | 甘やかしてる! オレたち甘やかすと大変なことになるよ! |
小岐須 | 一本の線だけとか提出してくるかもよ! |
で、拡大すると、その一本の線に何か凄いものが色々と……。 | |
五月女 | それは面白いねえ。 |
寺田 | うーん、面白いのかなあ。 |
本日のラクガキ

寺田さんラクガキ1
担当編集が遅刻している間に寺田さんが描いたラクガキ(ホントスミマセン)。LAと書かれたお風呂に浸かる寺田さんと小岐須さんの後ろには、小岐須さんの愛犬の姿も。

寺田さんラクガキ2
「みにこいやっ!!」の全体図。実は下方には新暦の沖縄県民の姿が。寺田さんのアレンジを加えて描いてくれました。

五月女さんラフ
今回の完成絵に描かれた「みにこいや!」のゆるキャラ以外にも、「ボーフーウー」というゆるキャラ(?)も描いていた模様。