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ghostpia シーズンワン Special interview<前編>【ミタヒツヒト&山本すずめ】

対談・インタビュー
雪に閉ざされた町に住む幽霊たちの物語を映画のように
読み進めていくビジュアルノベル『ghostpia』。
絵本のようなタッチとグリッチとノイズに彩られたノスタルジックな表現が味わえる。
このたび装いも新たに、Nintendo Switch向け・Steam向けのビジュアルノベル『ghostpia シーズンワン』としてリリースされる。
新作エピソードだけでなく、これまでのエピソードもリメイクしたという意欲作について今回は制作チーム・超水道から山本すずめさんとミタヒツヒトさんにご登場いただき、制作チーム結成時のお話から『ghostpia』の世界の魅力、ビジュアルづくりのエピソードまで幅広く伺った。
3/15に発売された「季刊エス」81号の誌面に引き続き、WEBではメインプログラマーのhako 生活さんも参加!
豪華な前後編のロングバージョンでお届けする!

『ghostpia』を制作するチーム「超水道」の結成エピソード

出典:超水道 公式サイト(https://chosuido.jp/


──今回の特集では『ghostpia』シリーズの世界やビジュアルについてのお話を中心に伺っていきたいと思います。まず簡単に制作されたチームの「超水道」について伺えますか?

山本 四人組の創作ユニットで、シナリオライター二名(ミタヒツヒト/蜂八憲)とグラフィッカーが二名(斑/山本すずめ)います。この四人で賄えない音楽などを外の作家さんにお願いしながら、主に「ノベルゲーム」を手がけています。

出典:超水道 公式サイトより、これまでに手がけたデンシノベル作品のひとつ『森川空のルール』
https://chosuido.jp/works/morikawakuu_no_rule


──2011年に結成されたんですよね。学生時代から活動されていると伺いました。

山本 ミタ君と斑君が小学校からの幼馴染なんです。僕は二人と中学のときに知り合ったのですが、当時から休日に近所のファミレスで創作活動のようなことをしていました。それぞれ別の高校に進学して疎遠になったのですが、僕が美術予備校に通っていた浪人中にミタ君から「久々に会わない?」と連絡がきて。知らない間に二人で同人サークルを作って活動していたんです。

──そうだったのですね!

山本 そこで「一緒にやらない?」って声を掛けてもらいました。「受験の息抜きにもなるし、いつでも辞められるからさ」みたいな怪しい感じで(笑)。浪人中で疲れていたこともあって、軽い気持ちで勧誘されてそのまま、まんまと取り込まれてしまい(笑)。四人目の蜂八憲は、超水道で新作をスタートさせるタイミングで参加しました。お話を書ける人を探していたときにTwitterのフォロワーさんからの紹介で知り合ったんです。

出典:蜂八憲さんによる『ghostpia シーズンワン』制作後記(https://chosuido.jp/blog


──ミタさんと斑さんは、結成当時からゲーム作りに興味があったのでしょうか?

ミタ 超水道は最初期からノベルゲームを作り続けてるんですけど、源流のようなものは学生時代にあるように思います。二人と出会った中学生のとき、演劇部を作りたい国語の先生と一緒に演劇部を立ち上げてオリジナル作品の脚本を書いて上演したことがあって。そこで僕はシナリオを書くことに目覚めたという気がします。

──物語を作る経験がゲームを制作される前にあったのですね。

ミタ 超水道を発足したのは高校二年生の時で、受験を前に現実逃避として「同人ゲーム界隈が盛り上がっているから作ろう!」と斑に声をかけました。自分がシナリオライターで斑がグラフィッカーという、少人数で作れることもノベルゲーム制作を選んだ理由でした。

──同人ゲームのなかでノベルゲームに興味を持ったのはどんな点でしたか?

ミタ 僕は高校でも演劇部に所属して、そこで舞台を作っていたことが大きいと思います。演劇の好きなところが総合芸術というところなんです。それを別の媒体でも表現できるかなと思っていて。そのタイミングと同人ゲームのシナリオや舞台をつくるイメージが合致して、作れるんじゃないかと漠然と思ったんです。
 

──共通点があると感じられたのですね。ゲームを作り始めてから山本さんは誘われるわけですよね。

山本 誘われたときはゲーム作りの話はされはなかったんです。ボーカロイドブームの勢いがすごい時期だったので「CDジャケットを描いてみない?」という話をされました。

ミタ ボカロPさんから「描いてみないか」という話は実際にあったんですよ!

──誘い文句ではなく、実際にあったのですね(笑)。

山本 タイミングよくお誘いがあって描くことになりました。僕は高校のとき軽音楽部でバンドを組んでいたので「CDジャケット」という響きに弱くて(笑)。当時、同人音楽の存在を知らなかったので、バンドで手焼きしたCDよりも遥かに本格的なものが作れることに驚きました。せっかくなら話に乗ってみようと超水道に参加するようになって、CDジャケットやサークルのグッズイラストを描くようになったんです。なので、ゲームを作る話はしばらく経ってから。「新しくノベルゲームを作ろうと思うんだけど、一緒にやらない?」と声をかけてもらいました。

ミタ 中学時代からすずめ君はすごく絵が上手だったんですが、美大受験や浪人時代に力を蓄えた彼の画力を目の当たりにして、とても感銘を受けたんです。「このメンバーならどこまでも行けそうだ!」と自信もついて、ずっと作りたかったノベルゲームの制作メンバーに誘いました。

ビジュアルノベル『ghostpia』は実体験から生まれた物語

──活動の経緯を知ることができて嬉しいです! 初歩的な質問で恐縮ですが、超水道が制作している「ビジュアルノベル」について伺えますか?

山本 一般的なノベルゲームには選択肢や分岐によるマルチエンディングがあるのですが、超水道が制作する作品は選択肢を設けず一本のお話を濃密に描くことが特徴です。複雑な操作は一切ないので、「映画を読む」ような感覚で絵と音楽に彩られた物語を楽しむことができます。

──じっくりと物語に浸ることができるのが魅力ですよね。今作『ghostpia』ついて伺っていきたいと思います。まずは舞台となる幽霊たちが暮らす夜の世界について教えてください。

ミタ お話づくりのきっかけについて、シナリオを担当する僕からお話しますね。『ghostpia』の舞台が生まれるきっかけは大学時代にあるのですが、僕とすずめくんが関わったとあるお仕事で、忙しさから一時期完全に昼夜逆転生活を送っていたことがあって。寝ても起きても夜で、コンビニくらいしか開いていない夜の町を歩いていたときに「夜から出られない自分たちはまるで幽霊じゃないか」というフレーズが脳裏に浮かびました。それを育てて自分たちの作品にしたいと思ったんです。

──ご自身の体験が元になっているのですね。そのアイデアを聞いて山本さんはどう思われましたか?

山本 面白いことを考えるなと思いました。幽霊というと非現実的なイメージですが、当時は僕も似たような生活をしていたので妙に実感がありましたし、「夜に閉じ込められてる」という世界に刺さる人がきっといるだろうと思いました。話を聞いたときはすでにお話の大まかな全体像があったので「こういう世界だと綺麗だな」と少しずつイメージを膨らませながら、この作品を作りたいと強く思うようになりました。

──絵本のようなビジュアルづくりについて教えてください。

山本 物語のテイストにあわせて、これまでの超水道作品とは思い切り表現を変えようと話し合いました。デフォルメを利かせた可愛い感じは海外のカートゥーンアニメーションを参考にしているのですが、僕にはあまり馴染みがなくて。注文にうまく反応出来なかったこともありました。

ミタ 僕が海外アニメを好きなこともありリクエストしました。当時観ていた『アドベンチャー・タイム』の「暴力的な展開が突然描かれたり、壮大な設定が急に出てくる感じがすごくいいんだよね」と話したりしました。キャラクターの指を四本にしたいと言ったのも、その海外アニメのお約束に準じた結果からだったんですよね。

山本 僕が観ていたなかでカートゥーンの要素があったのは『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』だったんですよ。作品のなかで頭身を変えるという作風の幅の広げ方を参考にしたり、他にもいろんな要素を模索しながら作っていきました。

『ghostpia』に登場するメインキャラクターたちのビジュアルや衣装について

──デフォルメの効いたデザインと絵本のような柔らかいタッチで描かれているところも新鮮だと感じるところでした。続いて主人公の小夜子について教えていただけますか? ミステリアスな過去や無表情な表情が物語に膨らみを持たせているのかなと感じます。

山本 キャラクターの中で一番リテイクを繰り返したのが小夜子です。『ghostpia』は小夜子視点のお話なのですが、彼女は過去の記憶があやふやで自分のことがよく分かっていません。表情をつけすぎると自信の無さが薄れてしまうし掴みどころがなくて苦戦しました。そういった悩ましさが小夜子らしさとして表情などに反映されていると思います。

hako 生活 小夜子のビジュアルですごいと思うところがあって。衣装の袖に赤、首元に青が入っているところなんです。このカラーリングが特徴的ですごく気になってます!

山本 なんで入れたんだろう(笑)。ミタ君のイメージでトレンチコートを着せるアイデアはありました。現実的な服装にしすぎると全体的に茶色っぽくなりすぎてしまって、主人公なのに地味すぎるかと思い、ポイントとして色を入れたと思うんですよ。

──先端に色が入ると目に入りますよね。続いてヨルはいかがでしょうか。

山本 ヨルはずっと1024人から変わらない町にやって来た新しい幽霊という特殊なキャラクターなので、小夜子と対称的に現実感を抑えています。そのイメージはミタ君と自分で共通していたところですね。なので一人だけ髪にグラデーションが入っていたり、雪が降る夜の町では違和感のあるセーラー服を着ていたりします。意外性があって目を引くデザインに出来たかなと思います。

ミタ 「人魚みたいな感じ」というリクエストからセーラー服を着たデザインがあがってきて。すずめ君がすごく良い仕事をしてくれました!

山本 ヨルは主人公が抱くヒロイン像を意識していて、美しくてミステリアスなイメージなんです。セーラー服に行き着いたのはなぜだったのか…今となっては思い出せないですね。

──ヨルの衣装にも小夜子と同じ赤と青が入っていますが、彩度が高いので印象が異なります。

山本 キャラクターの性格から色を決めている感じはあるかもしれません。ヨルは明るくて小夜子より主人公っぽさがあるので、はっきりした色が似合いますよね。

──たしかにそうですね。そして、パシフィカもまた違うタイプの女の子だなと思います。

山本 頼りになる優しいお姉さんというイメージです。たしか「大人っぽい少女」という要望があったと思います。幽霊の町は時間の概念がないので小夜子とどれぐらい年が離れているか分かりませんが、小夜子たちのことを深く考えています。すごく頼りになる、保護者のような。信頼できる雰囲気が出るように目指しました。

──やわらかいけれど毒も吐くというギャップがありますよね。太い眉毛も可愛いです!

山本 四人並んだ時に、キャラクターの造形やパーツの属性が少しずつ違って見えるように意識しました。パシフィカさんは太眉と相性が良さそうだと選んでいったんです。

──眉毛の形からも個性が出ていますね。そして、アーニャは髪型や衣装から中性的なイメージが伝わってきます。

山本 少女になりきれていない雰囲気を意識しています。同い年の悪友みたいなイメージで、いたずらっぽい感じを出しました。服装もボーイッシュでユニセックスなコーディネートを選んでいます。

──メインで登場するのはこの四人ですが、物語には他にも気になるキャラクターが話数ごとに登場します。キャラクターをデザインされる際、この四人とのバランスを意識されましたか?

山本 そうですね。四人のデザインをベースにしつつちょっとずつ派生させたり、変化させて差をつけています。でも、それぞれのキャラクターごとに目的も性格も違うので、『ghostpia』らしさから逸脱しすぎない範囲で、特徴を活かすことを大事にしました。配色についてもキャラクターの性格やテーマをイメージしながら考えています。

 


ビジュアルノベル『ghostpia シーズンワン』はニンテンドーeショップにて配信中!

スタッフ
原案・シナリオ:ミタヒツヒト
制作進行:蜂八 憲
アートワーク:山本すずめ・斑
メインプログラマー:
hako 生活(from ヨカゼ)
音楽:高野大夢
歌:Meno
制作:超水道
レーベル:ヨカゼ
パブリッシャー:room6

Twitter@chosuido
ghostpia公式サイトhttps://ghostpia.xyz/
超水道公式サイトhttps://chosuido.jp/

山本すずめ Twitter@yamamotosuzume
ミタヒツヒト Twitter@hitsuhito
hako 生活 Twitter@clrfnd