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イラスト業界のホンネ ~ポートフォリオの作り方~【中編 20枚のイラストで、理想のポートフォリオ作り!】

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対談・インタビュー
【前編 20枚のイラストで、理想のポートフォリオ作り!】はこちらからご覧いただけます→https://www.s-ss-s.com/c/honne1

※この記事は、季刊エス61号に掲載されているものと同じ内容です。
 

絵を描いている人の中には、イラストレーターになりたい人もいると思います。そんな時に大事なアイテムが自分の作品を入れたポートフォリオです。作家同士の交流のために作る作品ファイルもありますが、仕事をするためのファイルは、別の構成が必要となります。出版社の編集者がどのようなポートフォリオを求めているのか角川春樹事務所の中津宗一郎さんに教えてもらいながら、その作り方について全3編で紹介していきます!


中編 実際にポートフォリオを作ってみよう

◎文:中津宗一郎(角川春樹事務所)  

角川春樹事務所所属の文芸編集者。角川書店スニーカー文庫、スクウェア(当時)などで編集・企画を担当。 日本初のライトノベル解説書『ライトノベル完全読本』(日経BP/2004)を発刊してラノベブームを顕在化させ、2000年代の評論本ブームにも多く携わる。新人作家・評論家の発掘に手腕がある。
Twitter:@nakatsu_s

◎立原圭子  書籍の仕事で活躍するイラストレーター。

Twitter:@k_coubou
作品サイト:http://k-coubou.sakura.ne.jp


◎粒アンコ(仮のペンネーム)  持ち込みを考えているイラストレーター志望。
Twitter:@06_pouro
pixiv:https://www.pixiv.net/member.php?id=1574507

 

プロローグ

 さて前回から始まった「20枚のイラストで理想のポートフォリオを作る!」企画。2回目では実際に完成したイラストを利用して、持ち込み用のポートフォリオを作ってきましょう。編集の現場で仕事をしているプロの編集者を唸らせるポートフォリオを作るには、イラストを貼る台紙やイラストを入れる順番などにも色々なコツがあるのです。
 そのコツをマスターすれば、仕事を依頼される可能性が何倍にもなりえます。と同時に実はコレをマスターするとイラスト自体も巧くなるのです。
持ち込みのポートフォリオは、「同人誌」とはまったく違うのです。
 そんなプロ向けのポートフォリオを早速作っていきましょう。アシスタントは前回に引き続いて、イラストレーターを目指す新人の粒アンコさん(仮)と、すでにプロとして活躍されており、絵本など更なる分野に活躍を拡げようとしている立原圭子さんです。
入れるイラストは20枚で十分です!



①:ポートフォリオを入れるファイルを買おう!

 さてポートフォリを作るためにまずしなければならないこと。それはポートフォリオを入れるファイルを買うことです。
 まずここで注意したいのは「ポートフォリオは編集部に渡しっぱなしになってしまうので、あまり高いファイルは買わない」「編集部に送るために同時に何セットもポートフォリオを作る」ということです。またファイル自体を可愛らしく装飾する必要もありません。
 それともう一つ、「サイド収納形式のA4ファイルを買う」ということです。これは原画を保存する上でも重要です。縦収納(上からモノを入れる形式)にすると、カバンの中などで、厚みのある原画だと、散らばってしまうことが良くあるのですが、サイド収納であればそんなことはありません。
 またA3などの見開きもキチンと入れることができるので「サイド収納」はお薦めです。
 個人的にはネット通販でも購入できる上に、品切れということがまずない無印良品の「ポリプロピレンクリアホルダー・サイド収納 A4・20ポケット」を推薦します。

 まず表紙が透明なので、最初のイラストがうっすら見えて、編集者が探している時に見つけやすいこと(表紙が不透明、または色付きは良くないです)。背表紙はシールで作らねばならないですが、使いやすさと入手のしやすさから一押しです。

 

ポートフォリオの外観

立原さんが実際に使っているポートフォリオ。
無印のファイルは、サイドから取り入れ出来るのがポイント。

 

②:イラストを貼り付ける台紙を作ろう!

 次にイラストを貼り付ける台紙を作ります。初心者がよくやりがちな失敗として、「イラストを大きく見せるために、プリンタの印刷領域の限界まで絵をプリントする」ということがあります。実はこれはちょっと勿体無いのです。
 ポートフォリオ作りに手慣れたイラストレーターは、イラストの四方と下部に余白を作ります。そしてイラストの下部に「イラストのタイトル」「自分の名前」「サイトアドレス(連絡先)」を入れます。この台紙にイラストを貼り付けることで、1枚1枚のイラストすべてに情報が載るようになります。
 「イラストの画材」「イラストの製作時間」を入れる方もいますが、それは好みでかまわないと私は思っています。またそのイラストが仕事で使われたものであれば、「どの本で使われたか」を入れるのは良いことですね。
 ではなぜ1枚1枚にまで、「自分の名前」「サイトアドレス(連絡先)」を入れるかというと、それは編集者が気に入ったイラストレーターを使う場合に、ポートフォリオ内のイラストを取り出し、コピーやスキャンして小説家に見せたり、他の編集者に見せることが多いからです。
 最初から名前や連絡先が入っていれば、単にコピー機でコピーするだけで、連絡先がコピーにも反映されて、編集者が、作家に見せるコピーに名前を書き込んだりする必要がなくなるからです。ファイルが紛失してしまって、イラスト1枚だけが残ったとしても連絡先が分かるというのは重要ですよね。
 ちょっとした工夫ですが、ぜひ実践してみてください。

立原さんのポートフォリオの作品 立原さんのポートフォリオの作品。イラスト下部にwebサイトと連絡先が書かれている。

 
 

 

③:ポートフォリオの20枚の順番はコレだ!

 さて、ポートフォリオ作りの中で、もっとも重要と言えるのが、入れるイラストの順番です。まず最初に絶対にやってはいけないこと2つをお教えしましょう。

A 最初の頁に経歴を入れてはいけない。
B 描いた順番でイラストを入れてはいけない。

この2つです。ポートフォリオを作りなれていない方はどうしてもこういう失敗をしがちですが、これは絶対にやってはいけません。
「(A)最初の頁に経歴を入れてはいけない」理由ですが、編集者が見たいのは、あなたの自慢のイラストであって、学歴や経歴じゃありません。なにより急いでイラストレーター候補を探している場合が大概なのですから、まず最初の頁にもってくるのは、あなたの現時点での最高のイラストの必要があるのです。一目で編集者を惹きつける要素とは最高のイラストであって、経歴などではないのです。経歴は最後の頁に入れましょう。
 次に「(B)描いた順番でイラストを入れてはいけない」というのも同様です。それは古いイラストを編集者に見せる=技術のない頃のイラストを見せるということと同意です。最初に持ってくるイラストは、思い入れのある卒業制作のイラストなどでは駄目なのです。自慢のイラストを入れましょう。
 さてこの2項目をまもった上で、以下のようにイラストを入れていきます。


●1P カバー表紙は、自分の一番得意で特徴的なイラストを入れる。

複数キャラクターが入った、描き込みすぎていないイラスト。キャラクターはイラストレーターさんの個性がもっとも出る絵です。カバーを観た瞬間に、ひと目で識別できるように、そしてひと目で分かるようなスッキリとしたイラストを最初に入れましょう。

立原さんの表紙絵立原さんの表紙絵


 

粒アンコさんの表紙絵(仮) 粒アンコさんの表紙絵(仮)

 

●2Pから7Pは、自分がもっとも得意とするイラストを入れる。  

 この部分は特に説明する必要がありませんね。要するに自分が一番気に入っていて、もっとも得意としているジャンルのイラストを最初にいっぱい見せましょう。見開きで入れるのも良いかもしれないですね。

立原さんの得意な絵立原さんの得意な絵



 

粒アンコさんの得意な絵
粒アンコさんの得意な絵


 
●8Pから9Pは、最初とは違ったテイストのイラストを入れる。  

 さてここからが上級者のポートフォリオ作りの本番です。ポートフォリオの最初を観た編集者は、もうあなたの実力を十分に分かっています。ここからは、あなたにできる仕事の幅を見せていくパートとなります。
 最初にファンタジーテイストのイラストを入れたのであれば、「和風・時代劇っぽいイラスト」「現代の高校生カップルのイラスト」「ホラーテイストのイラスト」「セクシーなイラスト」などを入れてみましょう。
 自分には得意なイラスト以外に、こんなイラストも描くことが出来るというのを、編集者にみせていくのです。アマチュアの場合は、どうしても自分の好きなものを描きがちですが、それではプロの仕事をこなすことは出来ないです。また普段は描かないイラストを描いたほうが、結果的に自分の得意なイラストをより上達させるためにも効果的であったりします。

立原さんの別テイスト絵 立原さんの別テイスト絵



 

粒アンコさんの別テイスト絵粒アンコさんの別テイスト絵

 

 この後にも続きますが、さまざまなイラストをバランス良く入れてきましょう。

●10P、11P 中年の親父、叔母さん、爺婆を配したミステリ調のイラスト

●12P、 精密なパースをとったビル街や橋が背景にあるイラスト

●13P 車、メカが入ったイラスト

●14P 15P 自然の風景が背景に入っているイラスト

●16P 架空の本のカバーをデザインしたイラスト

●17P ゲームのキャラデザ3体。ラフでも可。デザインの幅を見せる

さて17枚目までは上記のような感じでイラストを描いてみてください。あまり描かれない、忘れがちなジャンルを指摘してみました。
イラストレーターの方は忘れがちですが、世に出ている小説の主人公は、中年以上がほとんどです(中高生はラノベだけ)。なので小説誌での仕事を取るためには、カッコイイ中年オヤジを描けた方がいいのです。
本の架空イラストは、一般小説で自分の好きな本のカバーを自身で工夫して描いてみてください。東野圭吾さんや宮部みゆきさんのミステリあたりがオススメかもしれません。

●18P モノクロイラスト(コマ割りしたマンガ)

●19P モノクロイラスト(線のタッチを変えて)
これは連載の第1回目でも触れましたが、イラストの仕事はモノクロも多かったりします。ただ最近は多くの人が、最初からフォトショップなどを通じてカラーイラストから入るため、モノクロが苦手な場合も多いです。
モノクロもちゃんと描けることを示しましょう。

●20P 最後のページに連絡先や仕事の経歴などを入れる。
最後のページに経歴や連絡先を入れます。これは普通の書籍の奥付の感じで控えめに入れるのが良いですね。

立原さんの奥付

●名前/ペンネーム

●住所/電話番号(連絡可能時間も入れる)

●メールアドレス/サイトアドレス/pixvアドレス

●今までに付き合いのあった編集部、仕事リスト、受賞歴、卒業した学校など

各イラストの台紙に、名前やサイトアドレスを入れたかと思いますので、こちらにはそれを含めて詳細な情報を載せていきましょう。
 もし描けるのであれば、簡単な自画像(Twitterなどで使っているアイコンなど)や自分の写真を入れるのもいいかもしれません。

 

④:背表紙 ファイルの背表紙を作る。名前とイメージイラストを入れる

 さて忘れがちですが、絶対にやっておいたほうが良い最後の作業が、ポートフォリオに背表紙を付ける作業です。

 なぜ背表紙を付けるのか? それは各編集部にはかならず持ち込みや郵送されたポートフォリオをまとめて置く棚があり、あなたの作ったポートフォリオはそこに棚差しされるからです。

 

 

立原さんの背表紙

 

ファイルが棚差しされている本棚のイメージイラスト

立原さんの背表紙と、ファイルが棚差しされている本棚のイメージイラスト。


 

 どんなに魅力的な表紙イラストを作ったとしても、棚差しされてしまっては見つけるのが困難になってしまいます。そこで背表紙に名前と自分のイラストのイメージがわかる背表紙を入れておくべきなのです。 忘れがちですが、ぜひ試してみましょう。

 

 さてこれでポートフォリオに入れる20枚の準備が完成したかと思います。前編で書いたことと合わせれば、「同人誌の焼き直し」「自分の好きなイラストが満載」だったポートフォリオから一味違う、「プロの仕事向けのポートフォリオ」が完成したかと思います。
 次回はいよいよ編集部への持ち込みです。編集部への連絡の仕方、またどういった編集部へ持ち込めばよいかなど、実践で使える情報をお教えします!

 
 

★続きは、季刊エスS62号(発売中)にて掲載中。