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寺田克也ココ10年展 インタビュー

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 2013年、寺田克也の本邦初となる展覧会が、京都国際マンガミュージアムで開催された。日本を代表するイラストレーターであり、マンガ家としても活躍する寺田の手掛けた仕事は、雑誌や書籍の装丁画や、ゲーム、映画・テレビの設定画など、膨大な量に上る。この展覧会では、その中から“ココ10年”に描かれた作品を展示。緻密な描き込みの迫力を体感できるデジタル画の大判出力、自由自在かつダイナミックな筆致をじっくり堪能できる肉筆原画など、計300点以上が並ぶ必見と言うべき大充実の内容である。そんな本展の内覧会には、寺田克也と旧知の仲である漫画家の多田由美と皇なつきも来場。大迫力の展示を楽しんだというお二人をまじえ、「寺田克也ココ10年展」の魅力をお三方にうかがった。

 

――展覧会というと、普通は額に絵を飾る形ですよね。でも、『寺田克也 ココ10年展』はそうではなく、ダイナミックな展示方法に驚きました。襖に拡大した絵を貼る展示方法は、どういう風に決まったんですか?
寺田 伊藤ガビンさんに、展示の相談をさせてもらったんですよ。で、「これはもうちゃんとやりましょうよ」という話になって。アートスタジオを主宰している有元利彦さんも企画に参加してくれました。最初の打ち合わせで、ハンバーガーを食いながら俺が「額に飾っておとなしくやるのはイヤだ」って言ったんです。出来るだけ大きく見せて、しかも綺麗に見せるというよりは、ただもう大量に絵を味わえる……そういう展示がしたくて。むしろもう、倉庫に見える感じでもかまわない。それをうけて有元さんが「京都だし、襖がいいんじゃないですか」って、案を出してくれたんです。
――なるほど。いろんな人の意見で決まっていったんですね。
寺田 でもその時点では、有元さんもここまでの事は考えてなかったみたいです。とりあえず、襖という形はアリだねと話をしたんだけど。実際に絵を貼り込んで、設営の日に襖が立っている状態を皆で見たんですけど、その時に、「ぜんぜん思ったのと違う!」と感じました。もっと普通に襖が立っているだけだと想像していたんですが、すごく風景化するというか…一つの景色になっているんですよね。奥行きがあるから絵と絵が重なっていて、そういうのが、想像を超えた面白さになっていた。もう大正解でしたね。

 

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寺田克也 ココ10年展 会場の様子

 

――絵を見る楽しさがすごくありますよね。
寺田 もともと俺の絵はエンターテイメントなので、絵を見て何かを感じてもらうというよりも、面白ければいいと思っているんです。そういう目的にはすごく適っているんじゃないかと思う。展示自体も覗き込んだり、自分からアプローチすることができるので、かなり面白いものになりましたよね。と、思うんですけど。どうでしたか?
多田 面白かったですよ! 裏面もあるから、一周まわっただけでは見切れなくて…。
寺田 見逃した感じがね。
多田 絶対見てないのがまだあると思う。
寺田 一応タブロイド(展示パンフレット)に全部、展示した絵のコメントを入れているので、これを帰り道にでも見つつ、「これ見てない!」って発見してください(笑)。
多田 帰り道って、それじゃだめじゃないですか(笑)。

 

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配布されたタブロイド紙

 

――絵の大きさについてはどうですか? なかなかこんな大きさで絵を見ることはないですよね。
  これぐらいの出力に耐え得るようなサイズで描いているわけですよね?
寺田 そうそう、昔からね。Macで描き始めた頃からサイズ問題があって。「大きく出力しても耐えられるサイズってどの程度ですか?」と聞いたことがあるんです。そしたら、「4000ピクセル以上で作っておけば、だいたい対応できる」って。仕事で試しながらやっていて、確かに4000あれば少々大きくしてもドットが見えないんですよ。最近はマシンパワーが上がっているから、さらにピクセル数をあげて6000とか。『猫とドラゴン』とかは最初から大きくするつもりだったから、もう10000超えてますよ。横はね。でも下絵は鉛筆で描いているし、スケールサイズというのはあって…やっぱり拡大しているなという印象はもちろんあるんだけど。
  こんなに大きくしても全然遜色ないのがすごいですよ。
寺田 意外とどの絵もそうだけど、細かい所でバランスを取っている絵って、拡大してもそのバランスは崩れない。それに、大きくすると線のボソボソが面白かったり、そういう感じはあるよね。アラもどんどん目立つんだけどさ。
――筆跡が見えているのが面白いですよね。「こんな感じで塗ってるんだ」というのが感じられて。
寺田 俺、30インチのモニターで描いてるんですよ。で、その30インチで拡大しながら描くでしょ。全体を見ながら塗るときもあるけど、細部を描く時は拡大しますよね。30インチに拡大して細かい所を塗っている時って、全体がこのくらいのサイズになるんです。だから、意外とこれが原画サイズと言っていいのかも。

 

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拡大してみるとCGだが筆のタッチが見えて臨場感がある。

――なるほど。実際このくらいのサイズ感で見ている時があるんですね。描いている最中は。
寺田 そうなんです。まぁ、あくまでも拡大ですけどね。どうしてもタッチは出ちゃうから。そこもまた、面白いかなと。つまり、まる出しですよ。

 

 

――展覧会を見て、皇さんはどう感じましたか?
寺田 近所でよかったなって(笑)?
  いやいや(笑)。やっぱり圧巻ですよね。
寺田 みんなもやりましょうよ、襖で! きっとすごく映えるよ。
  図録を拝見したら、日本家屋のような和の空間に、襖を置いて撮影している写真があってすごくかっこよかった。これはどこなんですか?
寺田 これは京都の蹴上の方にある旅館なんですよ。友達が経営しているんだけど、そうとう古い家を使っていてね。襖と空間のしっくり具合が尋常じゃなかった。
――絵のモチーフ的にも合っていますよね。
寺田 俺は小学校の頃から三十三間堂とかがすごい好きで。デザインソースの中には確実に入ってると思う。今回のメインビジュアルの女の子の絵は、三十三間堂の二十八部衆みたいなイメージで描いたんです。それがまた襖にピッタリでね。
――色づかいも和風に合う感じがありますね。たとえばモチーフがデビルマンでも、このくすんだ感じの色味のせいで、和風とマッチしていますし。
寺田 面白かったですねぇ。襖。
  伊藤若冲とかに通じるものがありますよ。
寺田 本当に(笑)? ありがとうございます。

――多田さんはどうでした?
多田 題材がすごくバラエティに富んでいて面白かったです。
寺田 節操がないですよねぇ(笑)。
皇  いやいや(笑)。アメコミの絵はよく描いてるんですか? ウルヴァリンの絵とかありましたけど。
寺田 そうでもない。展示してあるものくらいですよ。ワンダーウーマンは企画展で描いたものです。いろんな人がスーパーヒーローを描くという……。
多田 『ちょびっツ』もありましたよね?
寺田 そうですね。トリビュートで描いたやつです。

 

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――そういうトリビュートがいろいろ揃っているのも面白いですよね。意外なものもあったりして。あと、多田さんは鉛筆画が面白いと言ってましたよね。
多田 鉛筆画、良かったです。ずっと見ていられるぐらい。
  見てて飽きないですよね。やっぱりアナログの線っていうのはすごく魅力があって。
寺田 やっぱりなんだかんだ、展示で力があるのはアナログの絵だよね。デジタルは何かで補わないといけない気がするし。目があんまり喜ばないから。ま、アナログは強いですよ。

 

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――今回の展示では、アナログ作品とデジタル作品を分けていますよね。見せ方もコントラストをつけていて、面白いと思いました。アナログ部屋の黒壁に白で描いてある絵は、ここに来て描いたものなんですよね?
寺田 そうそう。あれは設営の時にその場で描いたんですよ。

 

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――皇さんは、寺田さんの絵で好きなモチーフは何かありますか?
  やっぱり私はアメコミ系が好きですね。すごくアメコミに合ってますよね、寺田さんの絵柄。日本人にもアメリカ人にもウケる絵だと思うし。あと私、『アサシンクリード』シリーズにもハマっているので、その絵が見られてめちゃくちゃ嬉しい(笑)。
寺田 あれは『アサクリ』のトリビュート展を東京でやったときに描いたやつで、それ一回しか出してないからね。

 

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――皇さんは海外物がお好きなんですね。
皇  そうですね、最近は。
寺田 意外だよね。皇さんがアメコミ好きっていうのは。
  どうしてもアジア方面のイメージが強いでしょうね。
寺田 そうそう。
――多田さんは好きなモチーフはありますか?
多田 私は裸。裸が好きなんで(笑)。
寺田 男でも女でも?
多田 ええ、両方。露出度が高いのが好きです。
寺田 でも今回抑えたんですよね。エロ系は。
多田 鉛筆画にはけっこう裸がありましたよね。
寺田 本当はエロゾーンも作ろうかと言ってたんだけど、子供もいっぱい来るので外しました…。残念ながら。
――頑張って見たら見える裏とかに…。
多田 そしたら、お父さん裏にばっかり集まっちゃう(笑)。
寺田 言ってもそこまでエロいのないけどね(笑)。
皇  映画『ヤッターマン』のコンセプトデザインをやられていたんですね。ドロンジョ様のデザインがめっちゃ格好よくって。
寺田 あれはキャスティング決まる前に描いたやつですね。決まってからもう一回、深田恭子さんに合わせて描き直したんですよ。

 

――この展覧会の展示構成やレイアウトは、寺田さんが主導でやったんですか?
寺田 レイアウトは俺のほうで指定してないんですよ。最初に大きくしたい絵だけをチョイスして、後はもうお任せして。大きさも決めてないんで、『猫とドラゴン』が5枚の襖になってたのは自分でもびっくりしました。「でか!」って。かなり目玉になったんで、5枚にしてもらって良かったなと思ってますよ。
――『猫とドラゴン』は線画も大きいんですか?
寺田 そう。あれはA3のスケッチブック5枚分。
――A3を5枚ですか! それは大きいですね。
寺田 どんどん描き足していった感じ。
多田 テープで貼ったんですか?
寺田 そうそう。
多田 テープの継ぎ目はどうしたんですか?
寺田 それはデジタルで直しました。
多田 直すんですかやっぱり。前に、私もデジタルで継ぎ足すような直しをした時にすごい罪悪感を感じて…。直しながら、なんかいけない事をしているような気がしちゃったんだけど、アリなんですね(笑)。
寺田 アリアリ。全然。
多田 よかった(笑)。
寺田 ペインターの鉛筆に似たブラシでちょっと直しました。

 

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――伊藤ガビンさんは、レイアウトに関しても意見を出されたんですか?
寺田 設営のときに来てもらって、皆でやった感じですね。もっと喧々諤々になるかと予想していたんですが、俺らが来た時にはマンガミュージアムのスタッフさんが大雑把に配置してくれていて。その段階で「かなりいいんじゃないの?」という感じだった。たとえば『猫とドラゴン』の位置や、モノクロの絵の位置が決まっていたんですけど、その隙間からワンダーウーマンの絵が見えたりしていて「これは面白いな」って。モノクロの絵の中に突然カラフルな絵が見え隠れしている。
――隙間から何が見えるかというのも面白いですよね。ここからはちょうどデビルマンが見えますけど。
寺田 そんな展示は他にはないもんね、あんまり。

 

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――逆に壁にはほとんど絵がないという。
寺田 最初から「壁を使わないようにするにはどうしよう」というところからスタートしてるからね。
――絵を見るだけなら本でも見られますが、展覧会はいわば“絵を体験する”ための場所ですよね。ここは本当にそういう感じがあります。
寺田 生の絵だと見るだけで体験できる感じがあるけど、出力はあくまで出力。べたっとしてるから見てても目がすぐ飽きちゃうんですよね。だから、せめて大きくする事で、追っかけるのに時間かかるようにして…。そういう体験の仕方はあるかなって思ったんですよ。
――寺田さん自身もいろいろな展覧会に行かれますよね。見ていて「いいなぁ」と思うポイントはどういうところですか?
寺田 行く度に「生の絵は強いな」と、いつも思いますね。もちろん印刷の仕事は好きなんですけどね。ただ近くで見る生の絵って、たとえ鉛筆でも凹凸があるし。それは他のものには変えられない面白さですね。
――色鉛筆や墨のムラとか、ああいうのを見ていると面白いですよね。生で見ると、逆に印刷で消えてしまうような所こそ面白かったりする。
寺田 特に縮小して印刷すると、アラも飛んでいいよね。

 

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――そういえば、皇さんは原画がとても綺麗ですよね。
寺田 綺麗だねー。
  そうですか? ありがとうございます。
――多田さんは逆にワイルドというか、ベタとか凄いですよね。塗った感じが残っていて。
多田 「印刷が綺麗だったら勝利だ」って教えてもらったんで(笑)。
寺田 その通りだと思います! 漫画の場合はどうしてもね。原稿が綺麗かどうかは自分のやる気とか、満足度に繋がるんだろうけど…。
多田 原稿が綺麗でも、印刷上がりが悪い人は損でしょうね。
寺田 わかるわかる。俺、生まれてはじめて漫画原稿の手伝いをしたのが桂正和さんの『ウイングマン』でさ。そうしたら、ものすごい修正のホワイトが盛り上がっていて「えぇっ!?」ってびっくりしたんですよ。それが印刷に出ないのを知らなかったから。かなり衝撃でした。で、盛った上にインクで描いてて、「ほとんど立体じゃん」みたいな(笑)。でも、それは「ジャンプ」に載ると非常に綺麗な漫画で……“印刷”を感じた最初の瞬間でしたね。
――皇さんは、原稿を描く時に綺麗に仕上げたいという気持ちがありそうですよね?
皇  昔はそうだったかもしれないですけど、今は全然。足跡ついてようが、墨垂れようが気にしない(笑)。ちょっとぐらい汚くても、誰も気にしないかなと思って。
多田 大人になった(笑)?
  やさぐれた(笑)。
寺田 いやいや、それはいい事ですよ。自分が思っているより見る人は気にしない。気にしすぎていてもしょうがないと思うよ。
皇  すごくぞんざいに扱ってますからね。自分の原稿を(笑)。
寺田 俺もそうだよ。
皇  床に広げて、それを普通に踏んで歩いてたりとか。昔はピュアだったから、すごく丁寧に扱ってましたけどね。
――多田さんは昔からわりと原稿をラフに扱っていましたよね。ちょっとロックな感じで(笑)。
寺田 昔、膝の上に置いて描いてるって言ってたよね(笑)。
多田 今も膝の上(笑)。あ、でも最近ちょっと成長してトレス台を膝に置いて、その上に原稿をのっけてます。
寺田 最近のトレス台ってすごく薄いよね。びっくりしたよ。昔すごいデカかったじゃん。
多田 全部光るんですよ。端まで。
寺田 素晴らしいよね。
――寺田さんはトレス台を使わないんですよね? あと基本的に寺田さんは、ラフはほとんど一発描きだと昔聞きました。何度も描き直しながら、整えていくわけではないと…。
皇  ほとんど消しゴムを使わないって聞いた事あります。
寺田 使うよ(笑)。言うほど使わない事はないんですよ。でも最初からそんなに線をたくさん引かないから。一本引いて駄目だったら全部消して引き直すという感じなんで。だからあまり消し跡は見えないかな。消しゴムを使わないっていう噂だけが一人歩きしている。使ってるっつーのね(笑)。
――手塚治虫さんが使うなと言っていたからだとか。
寺田 それは落書きの話ね。上手くなる秘訣は、「消さないで自分の失敗を直視する事」って『漫画の描き方』に描いてあった。そんなん中学生のときに見たらね。真に受けるでしょ(笑)。
  伊藤彦造とかは、もう本当に下書きなしの一発描きらしいですよ。
寺田 あれで!? うそだー!
  確かそうだと思ったんですけど。すごいですよね(笑)。線は、消したりなぞったりしたら生きてないから駄目だって事で。
寺田 それはあるね。確かに下描きするとその線を追っかけちゃうんだよね、どうしても。ガイドにするぐらいの感覚じゃないと、下描きの生き生きした感じが消えていくとは思う。

 

 

――雑誌『コミッカーズ』にお三方がよく出てくれた時が10年ぐらい前ですよね。その頃というと、寺田さんがマンガイラストレーターとして、「めちゃくちゃ凄い人!」と話題になっていた時で…。でも今回の展覧会は、それ以降の作品を中心にしたというのが興味深いです。
多田 10年くらい前はもう、寺田さんに影響を受けた人がたくさんいましたもんね。
寺田 最近はもう逆にいないね。俺は昔の人だから(笑)。気がついたら「昔から描いてる人でしょ」というポジション。実際、若い人なんかはもう俺の事分かんないじゃん。知らなかったりするしね。そう思っている方が正しい気がする。
――10年前というのは、寺田さんを皆がどんどん認知していって、寺田さんを知るまでという感じでしたよね。そして、この10年は、もうみんなが寺田さんを知っている状態から「寺田さん今度は何するんだろう?」という感じ。ここ10年の仕事の広がりは、10年前よりも変わっていたりするんですか?
寺田 あまり変わってないですね。本人の意識も変わってないし。別に絵が劇的に上手くなってるわけでもないから、たいして何が変わったというわけではないんですよね。毎日「仕事しなきゃ」って、描いていたら10年経ってた。振り返ってみてようやく“10年”ってのが見えてくるよね。実際には、本当に数年ぐらいの感覚しかない。
多田 早いですよね。40歳過ぎると。
寺田 びびるよ。あっという間に歳をとったなぁ、と。あと何年できるか分からないけど、例えば90まで生きると考えるでしょ。そうすると今50だから、あと40年あればまだ何かできる気はするね。身体がもてば。そういう考え方をしようと思っています。
皇  なんだか寺田さんは現代の葛飾北斎になりそう(笑)。
寺田 それこそ90代まで絵を描かないといけないね(笑)。歳とって、体力と相談するみたいな感じになってくると、前のようなしつこさで一枚の絵を仕上げる気力は、なくなるのかもしれない。そこで枯れていくのかなっていう。でもそう考えると、北斎なんて90代の絵がもう信じられないような線で描いててさ。あれはもう体力だなって思う。ものすごい丈夫な人だったんでしょ、北斎って。俺なんて、今ですらちょっと熱があったりすると、ものすごいしんどい。それがもっと年をとった時だと考えると、本当に若いときのように線を引けるかって、不安になってくるんで。やっぱり体力を作るのも絵を描く上で、めちゃめちゃ大事だなって思いますね。
――以前、山田章博さんに取材したとき、歳をとってからの方が描き込むようになったと仰っていて…。なぜかというと、見た人に「山田章博はもう歳だからこんなもんなんだ」って思われたくないから、「だったらこれからもっと細かく描いてやる!」と思ったと。
寺田 オソロシイヒトダ! 昔から細かいのにさらに?! すごいなー。
――寺田さんは全て細かく描くというより、緩急がありますよね?
寺田 全部描き込むとやっぱりめちゃめちゃしんどい絵になるので、自分で見ても疲れるんですよね。やりきらなきゃならない時はもちろんあるかもしれないんだけど、緩急あったほうが好きだっていうのもあるし。
――線画で細かいタッチを入れた絵を見ると、凄いなと圧倒されるけど、スッキリしている絵の気持ちよさもありますよね。
寺田 両方ありますね。量で押すやつと、パッと構図だけで見せるやつと。それはもうどっちも魅力があるから、どっちが良いという事ではない。粗くても面白ければいいし。ただやっぱり、基本的に俺は線の人間だなという意識はあるかな。この間アメリカで個展をやった時は、とにかくもう線を引こうというテーマにしたしね。でも最近、絵具で塗る感覚も取り戻そうとしている。
多田 久々に塗ったりすると楽しいですよね。
寺田 今更なんですけど、固形の透明水彩あるじゃないですか。あれは持ってたんだけど、水で溶くための“水筆”という商品があるって初めて知って…。
――若い絵描きさんたちもよく使ってますね。
寺田 俺知らなくてさ! それ見せられて、「ええっ!?」って(笑)。慌てて3本ぐらい買いましたよ。あれは素晴らしいね。それを買ってから、けっこう落書きを水彩でやったりとかしてるんですよ。
多田 あ、見たいな~見たいな~。
  極めるまで表に出さないんですか?
寺田 そんな事ないですよ。ネットに上げたりはしてる。アメリカで展示をやったんだけど、ギャラリーで個展するのは売るのが前提だから、そうするとどうしてもアナログ絵を欲しがるんですよ。デジタルに値段は付きにくいんで。アナログがあって、その複製としてプリントを売る形はあるけど。オリジナルはやっぱり生の原画であって欲しいというのが、ギャラリー全体の総意みたいなところはあるんでしょうね。だから、向こうでショーをやるときはアナログでやるという感じにはなってる。今度、年末にロスでもう一度やるんですけど、それもアクリルか水彩かでやると思います。

 

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――展覧会の機会が増えてきているんですね。
寺田 それも、ここ数年の変化ですね。前は全然興味なかったから。展覧会とかはね。日本ではこれが初めてだし。
  もともとはアメリカが最初なんですか?
寺田 そうです。5年ぐらい前に初めてやりました。小さいギャラリーでプリントアウトを飾りつつ、鉛筆の原画を売って。日本でやるとファンが来てくれるんですけど、逆に言うとファンの目線で見られるから、絵としてあまり自立しないんです。向こうでやると、ギャラリーのお客さんが何の前提もなく普通に見てくれたりするでしょう。そういう意味では、気持ち的にすっきりしたんですよ。でも、やっぱりデジタルだけだとつまんないなってその時に強く思って。2回目はアナログにしようと決めて、それで3年前にマーカー展をやったんです。全部マーカーと鉛筆だけ。モノクロ絵の原画を飾るっていう。それがそうとう面白かった。またその原画を売れるというのが、仕事で描くのと違う感覚だったんで。
多田 けっこう快感ですよね。
寺田 そう、売る絵を描くっていうのがね。でも、結局は変わんないなってのも、もちろんありますよ。別にアーティストじゃないから、お客さんに喜んでもらえるとか、漫画を読んでくれる人が楽しめるようにとか。原動力として、買ってくれる人がその絵をずっと楽しんでくれるんだろうなっていうのが一番だからね。そういう風に、「絵を商品として成り立たせる」という命題を抱えてやっていくのも面白いなって、最近は思えるようになってきましたね。

――なるほど。展覧会にはそれ独自の面白さもありますよね。最初はアメリカで開催されて、そして日本でまた新しい形の展覧会が見られたことを嬉しく思います。多田さんや皇さんの展示も見てみたいですね。本日はいろいろお話くださってありがとうございました。

 

 

※この展覧会は、2013年に開催されたものです。

 

『寺田克也ココ10年展』

■会場:京都国際マンガミュージアム

    〒604-0846 京都市中京区烏丸通御池上ル

■会期:2013年3月16日(土)~6月30日(日)