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『オー・マイ・ゼット!』角田晃広(東京03)×神本忠弘監督 対談

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東京03の角田晃広が『オー・マイ・ゼット!』で、ついに映画初主演を務める。監督は、これまでに100タイトル以上の予告篇を手がけ、その独特のオバカ演出で、ネットでも大きな注目を集める神本忠弘だ。本作は“ゾンビが人を襲う”という定番ゾンビ映画の逆の発想で、一体のゾンビを欲しがる人間たちの応酬をコメディタッチで描いたもの。居合わせたのは、ゾンビが迷い込んでしまった花田家の夫妻をはじめ、動画投稿が趣味の高校生、町工場の冴えない社長、怪しげなインターン医師、そしてゾンビの生前の妻だと名乗る女──。そんな中で唯一、ゾンビ捕獲に反対する花田家の主人を角田が演じる。ともに初主演・初監督となったふたりが、『オー・マイ・ゼット!』の撮影エピソードや裏話を語る。

 

『オー・マイ・ゼット』の成り立ち……「マジ歌」で食われているところから映画の話がくるとは思わないですから(笑)(角田)

──神本監督は、もともと『オープン・ウォーター2』など、話題の予告篇をいくつもつくられていて、映画業界での認知度はもちろん、ネットでも注目を集めていましたが、映画本篇は『オー・マイ・ゼット!』が初監督です。まずは、なぜゾンビを題材にしたのか、また、その主人公になぜ芸人である東京03の角田さんを迎えたのかを教えていただけますか? 
神本 単純に中学生の頃からゾンビが好きだったんです。僕はジャッキー・チェンをきっかけに映画を観るようになったんですけれど、『13日の金曜日』で“怖さ”を楽しめる自分を発見してからは積極的にホラー映画を観るようになって、その流れでゾンビ映画にも辿り着きました。ゾンビ映画を色々観ていくと、単純に怖いものだけでなく、ラブストーリーからコメディまで、最近は特に様々だという印象がありました。そういったゾンビ映画に、ある時なんとなくパターンみたいなものが見えたんですよね。それは建物の中に閉じこもった僅かな人間たちが、無数のゾンビに囲まれて、そこから脱出し、別の地点に移動して“THE END”を迎えるというもの。そのパターンが多いと感じたんです。それで、その逆は無いんだろうかと思ったんですよ。要はゾンビがマイノリティで人間が多数派である社会に、ゾンビが一体現れたら、人間はどうするんだろうと。そんなことを考えていたら、プロデューサーの森安謙介さんから何か映画を撮らないか、というお話をいただいたので、その話をしたら、意外と打合せで盛り上がったんです。それで自信が持てたので(笑)、3ヶ月くらいかけてプロットをつくり、それをもとに配給会社をあたりました。そうしてクロックワークスさんに決まってから角田さんに主人公をお願いすることになったのですが、この映画は主人公だけが、わりとまともな感覚の持ち主なんですよ。それでゾンビを欲しがる、周りのおかしな人間たちに翻弄されるわけです。僕は基本的にテレビはバラエティしか観ないんですけど、芸人さん、特にコント師の方は演技が巧いという認識で、そういったことを思いながら、もちろん東京03のコントも観ていました。で、『ゴッドタン』という番組があるじゃないですか。角田さんがご自身でバンドを率いて、歌を歌われていますが、そこでの角田さんは、03のコントでの角田さんとは少し違っていて、わりといじられ役で、美味しいところを周りに全部持っていかれるという……(笑)。
角田 まあ、食われまくりですね(笑)。
神本 いやいやいや(笑)。
角田 なんとか言葉を優しくしようとしてくれてますけど(笑)。
神本 でも、その食われている角田さんがすごく面白く見えたんですよ。普段のコントではボケの位置でどんどん笑いを取っていく角田さんが、『ゴッドタン』では周りに翻弄されて必死になっている姿がすごく面白かったんですね。それで良いなあと思って正式にお願いしたんです。
角田 いや、まさかですよね。「マジ歌」で食われているところから映画の話がくるとは思わないですから(笑)。わからないもんですよねえ。
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登場人物の年齢設定……最初の段階では、主人公の年齢設定は50、60代にするつもりだったんです(神本)

神本 でも、すごく新鮮ではあるんですよね、あの角田さんの立ち位置というのは。
──あの角田さんのやられっぱなし感って、面白くて愛嬌がありますよね(笑)。
神本 そうなんですよ! ご自身は損な役回りだと思われているかもしれないけれど、実は逆に美味しいんじゃないかと僕は思っています(笑)。でも、そもそも最初の段階では、主人公の年齢設定は50、60代にするつもりだったんですけど。
角田 へーっ。
神本 でも進めていくうちに、これだけ年齢設定が高いと、ビジュアルとかバランス的にどうなんだ、と……。
角田 確かに、そうですよねえ。
神本 そうなんですよ。
──というか、順当に考えたら、あまりその年齢設定にはしなくないですか?
神本 たぶん、僕自身が40代なので、自分の年齢より少し上みたいな意識で考えていたんだと思います。でも言われてみたら、確かにちょっと無理があるかな……と(苦笑)。そこから考え直す過程でもう少し年齢を下げて、自分と同年代に落とし込んだほうが話としても転がっていくんじゃないかな、と思ったんです。だから初期段階からは相当変わりましたね。実は萩原利久くん演じる高校生も、最初は小学生にする予定だったんです。
角田 えーっ。そこは若かったんですね。
神本 最初は小学生で、その次に中学生で、最後に高校生になりました。
──萩原さん演じる高校生は、いかにも今の時代にいそうな、リアリティのある嫌なキャラクターで、おそらく観客が一番腹を立てる人物なんじゃないかと……。
角田 そうですよねえ。
神本 そうなんです、本当に。だから最終的には、彼が一番酷い目に遭うという方向性でつくっていました。それで“ムカツク小学生”みたいなイメージで考えていたんですけど、現実的に考えると、プロのベテラン役者さんたちの中で、小学生の演技が太刀打ちできるのかという問題もあって。結果として、上を下げて下を上げて、バランスを整えた感じです。今となっては、“これしか無い!”というバランスが取れたので、すごく満足しています。

 
初主演に向けて……自分の中の不安材料を削ぎ落とすために、あ、大丈夫、お芝居とかしなくて大丈夫、うん、大声出しとけばいける! みたいな感じでしたね(角田)

──角田さんは、今回が映画初主演ですが、お話がきた時は、どう思われましたか?
角田 なんでだろうって。
神本 ハハハハハ。
角田 とにかく “なんでだ??”から入りましたけど……主役として映画にガッツリ出るとなったら不安じゃないですか。それで不安になりながら台本を見たら、あ、そんなに役作りとかしなくても大声出しときゃいけるな、と(笑)。そんな感じで、自分で不安材料をどんどんなくしていきましたね。今回の映画は、ゾンビと言えども、ただ恐怖をあおるような作品ではなく、楽しめる、面白そうな物語だったので、僕もやってみたいという想いがあったんです。ですから、出る方向に向けて自分の中の不安材料を削ぎ落とすために、あ、大丈夫、お芝居とかしなくて大丈夫、うん、大声出しとけばいける! みたいな感じでしたね。
──なるほど(笑)。
神本 角田さんに初めてお会いした時に、まず最初に「普段の角田さんの芝居の感じでやってください」と、僕からもお願いしたんですよ。
角田 あれで、だいぶ安心しました。
神本 だから東京03ファンの方が観ても、すんなり入っていけるような感じになっているんじゃないかと思いますね。
──そう思います。
神本 とにかく角田さんが決まった時点で、ある程度、僕の中では“見えたな”という感じでした。奥さん役のともさかりえさんとのバランス面でも、自分の思い描いていたイメージにすごく近づけたと思って。
──主役が角田さんに決まってからは、角田さんのイメージに合わせて台本も詰めていった感じでしょうか?
神本 角田さんのところは、ほとんどいじってないですね。その頃の台本は150ページあったんですけど、その前の段階だと、さらにもうちょっと長かったんですよ。
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150ページの台本と撮影……撮影期間は、寝ない覚悟をしないとなあ、とすごくドキドキしていました(神本)

角田 完成がどのくらいでしたっけ?
神本 完成は90分なんですけど、僕は1ページ1分だと聞いていて。
──じゃあ、150ページだと2時間半になりますね。
神本 そうなんですよ。最初の段階で、まずはスタッフから「監督、これ、相当長いんじゃないですか?」と言われまして。
角田 2時間半ですもんね(笑)。
神本 いや、それは本当の初期段階のものなので、もっと長くて、“これでどうだっ!”と、短くカットして製本したものが150ページくらいだったんですよ。
角田 あ、その段階で150ページ?(笑)
神本 そうなんですよ。そこから僕の中でかなり焦りが出てきて……。撮影期間は9日間と決まっていて、その中で撮りきらなきゃならないので。ただ、予備日が2日あったので、「あ、予備日があるじゃん」と思ったら、「それは形だけです」と言われて。角田さんのスケジュールは取れてませんと……。
角田 誰のための形なんだ(笑)。
神本 それで、すごく焦っちゃって、とにかく台本をさらに短くしないと撮りきれないぞ、と思ったんですよ。それと並行して、当初はカメラ一台で撮る予定だったのを2カメに増やしてもらい、ヨリとヒキを同時に撮るというような形に変えてもらいました。コストはかかるんですけど、撮りきれなかったら悲惨だしなあと思って……。
角田 悲惨どころじゃないですよね(笑)。
神本 そうなんですよ。それで、なんとかいけたんですけど、映画の現場って徹夜が多いイメージだったので、撮影期間は、寝ない覚悟をしないとなあ、とすごくドキドキしていました。でも撮影初日は、まだ角田さんもともさかさんも入っていない日だったんですけど、その撮影が夕方の4時くらいに終わったんですよ。
角田 だいぶ早いですね!
神本 早かったんですよ。あれ? 早いなと。で、次の日から角田さんが合流されて、予定では10時くらいに撮影が終わるはずだったんですけど……
角田 そんなに遅くまでやってないですよね。
神本 スケジュール上は朝6時から夜10時までとなっていたんですが、10時までいった日は一日も無かったですね。だから、最初はもっと粘ったほうがいいのかなあと思ったりもしたんですけど……。
角田 逆に?(笑)
神本 うん、どうなんだろうと思って(笑)。
角田 いやいや、大丈夫ですよ(笑)。なに、無理矢理延ばそうとしてるんすか!(笑)

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本読み稽古への誘い……いつもは、とにかく3人で練習してますから、ひとりでやってると、「え? このあと誰だっけ? あ、俺か!」とかなっちゃって(角田)

神本 (笑)でも順調ならいいかと思って、開き直ってどんどん撮っていきました。そんな中で、角田さんが撮影の合間にみなさんを誘って、本読みの稽古なんかもやってくれて。
角田 ……不安なんですよ。
神本 アハハハハ。
角田 やっぱり、掛け合いみたいな台詞を自分ひとりで覚えることに慣れていないので、不安なんですよね。自分ひとりの長台詞だったらいいんですけど……。
神本 普段のコントは?
角田 合わせてやってます。いつもは、とにかく3人で練習してますから、ひとりでやってると、「え? このあと誰だっけ? あ、俺か!」とかなっちゃって。だから僕からお願いしたら、みなさんも「やりましょう」と言ってくださって、ありがたかったですね。
神本 僕も、角田さんが「練習しませんか?」とみなさんを誘っている姿が横目にチラチラ入ってきて、ありがたいなあと思っていました。
角田 おさないでいけるかな~って(笑)。
神本 ですからキャスト間の連携も比較的早い段階でできていたのかな、とは思います。
角田 基本、6人で常にやっている感じだったので、一体感ができるのは早かったですね。
神本 僕は常にテンパってましたけどね(笑)。
角田 初監督だから大変でしょう(笑)。
神本 だから最後にスタッフさんから「楽しい現場でした」と言っていただいた時は、嬉しかったです。できあがった作品にも、現場の楽しかった雰囲気、ドタバタ感みたいなものが、うまく出ていたので、良かったなと思いました。
──最初の1時間は、シチュエーション・コメディみたいな感じですよね。
角田 そうですよね。場面転換もそんなに激しいわけじゃないし、会話の感じ的にもね。
──会話の掛け合いが面白いです。角田さん以外はゾンビが欲しいという目的が一致しているので、それに対して角田さんがつっこんだり、怒ったりすることで、会話にグルーブができて、テンポよく進む感じでしたね。
角田 あ、じゃあ、良かったです(笑)。
──わりとヒキの映像が多いので、メインで喋っている人以外の動きや表情もよく見えて、手前で別のふたりが会話している奥で、角田さんがすごく良い表情をしているのが映り込んだりもしていました。
角田 ありがたいですね。見つけていただけると助かりますね(笑)。

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撮影から編集まで……まだ現場にいる夢を見て「まだ、クランクアップじゃないですよ! まだ、このシーンが撮れてないです!」って、スタッフに向かって叫んでましたね(神本)

神本 この作品は日常の中に突如、非日常が入り込んでくるという展開だったので、あの二軒の家が並んだロケ地も、のんびりした雰囲気の良い物件が見つかって、すごく良かったです。
角田 ねえ。確かにゾンビが出てくる映画と言うとすごく非日常的なイメージですけど、あの映画は確かに日常の感じがありますよね。
神本 日常から非日常の違和感を狙いたかったという部分もあったので。普通に生活しているところにゾンビが一匹でてきたら、どうすんだ!? みたいな。
──角田さん以外の登場人物はみんなゾンビが欲しいわけですから、全然緊張感や危機感が無くて、のんきに話が進んでいく感じですよね。
神本 そうですね、わりと緩い感じに(笑)。
角田 ゾンビに希少価値がある世界に慣れちゃったんでしょうね(笑)。
神本 だから怖い作品ではないので、観る方はいわゆるホラー映画として臆さないで、楽しい映画だと思って来てほしいです(笑)。
角田 ホラーが苦手だからと敬遠しちゃうのは勿体ないんで。入りやすい映画なので! ポップなので!! ホラーコメディですからね。
──はい、たくさん笑いました(笑)。
神本 ありがとうございます。で、話は戻るんですけど、台本が150ページあるので……
角田 あ、その話は、まだ続いてたんですか?(笑)
神本 ごめんなさいね、ちょっと戻るんですけど、150ページから、さらに削ったんですけど、それでも130ページはあったので、編集で短くできるか(当初は90分想定)不安がありました。それにクランクアップして家に帰ってからも、気が気ではなかったです。
角田 ほうほう。
神本 帰宅した日の夜に、まだ現場にいる夢を見て「まだ、クランクアップじゃないですよ! まだ、このシーンが撮れてないです!」って、スタッフに向かって叫んでましたね。編集も自分ですることになっていたので、「そういえばあのカット撮ったっけ?」とか、いろんなことを思い出しては一人で焦ってました。
角田 アハハハハハハハ! こわいこわいこわい!(笑)
神本 一度素材を見て、一通り繋いでみるまでは不安でしょうがなかったです。
角田 で、実際に、何個撮れてなかったんですか?
神本 いや、撮れてないシーンは無かったですよ(笑)。
角田 じゃあ、良かった(笑)。あぶないあぶない。
神本 でも物語の流れ上、映ってちゃいけないものが映っているシーンはあったので、それは加工して使いましたけど(笑)。基本は順撮りだったんですけど、天気の関係で順撮りにならないところもあったので、編集の最中に気づいて冷や汗が出ました(笑)。
角田 良かった、編集中に気づいて!
神本 でもそれくらいですね。で、実際に繋いでみたら、80分台だったんですよ。
角田 じゃあ、ちょうど良かったんですね。テンポも良いですもんね。
神本 だから、なんだ、と思って。
角田 あの心配はなんだったんだと。
神本 そうそう(笑)。

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撮影前の不安、監督が名前を読み間違えられて……完全に神主さんのミスですね(笑)(角田)

──角田さんのほうは撮影中、何か大変だったり不安だったりしたことはありましたか? 先程、本読みの話をされてましたけど。
角田 僕は、もう何せ声を張ることが多かったんですよ。そうすると、徐々に声が枯れていってるんですよね、自分の中では。基本、順撮りだったんですけど、そうじゃないシーンもあったので、完成したものを観るまでは、ちょっと心配してました。オレ、枯れてるな、日に日に枯れちゃってるな、でも、こっちのほうが先のシーンだぞ、とか。でも観た感じはバレてなかったと思います。
神本 うん、大丈夫でしたよ。
角田 いや、大丈夫で良かったです。あとは映画の撮影の前って、お祓いに行くじゃないですか。これねえ、監督の名前が正しく読まれなかったんですよね。
神本 そうなんですよねえ。忠弘と書いて“よしひろ”って読むんですけど……
角田 “ただひろ”なんですよねえ、どう考えても。
神本 そうなんですよ(笑)。
──確かに(笑)。
角田 それで神主さんに、おもいっきり名前を読み間違えられてるわけですよ。
神本 そうなんですよ、間違えられまして。
角田 そこで大丈夫かな、って不安はありましたよ。間違えられちゃってるけど、って。訂正もしづらいし(笑)。
神本 そうなんですよ。ちなみに、プロデューサーの森安さんも読み間違えられてて、“やすもりさん”って言われちゃってましたね(笑)。
角田 それは完全に神主さんのミスですね(笑)。
神本 あれは酷いなと思いましたけど(笑)。それがあったからなのか、この映画の編集中に、僕、自転車で転んで肋骨2本折っちゃったんですよ。
──えーっ!(驚)
角田 それは監督のミスですね(笑)。
神本 うん、自分のミス(笑)。
角田 関係ない(笑)。
神本 雪の日だったので。でも、それまですごく楽しく編集してたんですよ。良い感じに撮れてるな~と思って。でも、その日以来、地獄でしたね。呼吸するだけで痛かったです。
角田 だからスタートの不安がね……(笑)。
神本 でも現場は順調でしたよね。
角田 ええ、良かったですよね。

 

ふたりのゾンビエピソード……自分でゾンビ映画を考えているうちに、かつて観たゾンビ映画が、どうしても浮かんでくるじゃないですか(神本)

──(笑)角田さんは、確かに声を張り上げることが多かったんですけど、例えばともさかさんがゾンビのいる家に帰って来たことに気づいた瞬間の、なんとも言い表しがたい表情など、顔の演技もとても良かったと思います。
角田 本当ですか? 良かった~。
神本 緩急がありますよね。
角田 良いですね。そういうの、書いといてください。
神本 角田さんのキャラクターは、奥さんに結構強気に出るわりには、奥さんに対して弱気なところもあって、その感じがすごく良かったです。
角田 そうですね、基本、頭が上がらないので。そういえば僕、誕生日が撮影期間中にあったんですけど、その日に僕、映画の中で×××××だったんですよ……。
──面白いですけど、ちょっとネタバレに……(笑)。
神本 (笑)でも、よく映画のメイキングなどで、俳優さんの誕生日にケーキが出てくる光景を見ていたので、実際に生で見られたのは良かったです!
角田 森下(能幸)さんから、やきそばソースもらいました。
──(笑)角田さんは、ご自身ではそもそもゾンビ映画はご覧になっていたんですか?
角田 僕はそんなに観てないんですけど、『ウォーキング・デッド』とか……
神本 『バイオハザード』とか?
角田 ああ、そうですね。シリーズのどれかは映画館で観たな。監督はもともと好きなんですもんね。
神本 僕は相当好きですね。
角田 だから、この映画の中でもゾンビ好きな人が観ればわかる小ネタが色々あるんですよね。
神本 ちょっと放り込んでますね、オマージュ的なものは。
角田 オマージュが!
神本 自分でゾンビ映画を考えているうちに、かつて観たゾンビ映画が、どうしても浮かんでくるじゃないですか。それで、この流れなら、あのパターンが使えるんじゃないか…みたいに考えたり。そういえば、もし自分が映画をつくるとしたら、最初はゾンビ映画がいいな、と思っていたんですよね。だから夢が叶いましたよ。今回の作品の前にも別のゾンビものの構想を持ち込んだことがあるんですけど、それは色々とハードルが高くて却下されました。どうもネタ的に宣伝も難しいみたいです。

──え? どういうことですか? 怖いってことですか?
神本 汚染された覚せい剤によって、死んだヤクザの組長がゾンビになって蘇って、葬儀中に大暴れするという話でしたから。覚醒剤はまずいみたいで。
角田 コメディですね。
神本 そこに、いろんな組員や極妻とかが乗り込んでくる。あと、ヤクザの習性として、いくらゾンビとは言え、組長のことは殺せないので、その辺りも絡めたり。で、最後に“覚せい剤はやめましょう”というメッセージを言って終わろうと思ってたんですが(笑)。
角田 じゃあ、それは次の次くらいの機会で(笑)。


角田晃広の演技力……東京03内で飯塚さんに演技指導してもらってますから(笑)(角田)

神本 でもゾンビ自体が、今や、ただ怖いだけの存在では無いというか、可愛い部分もあるので、今回はそういうところも意識してます。
──冒頭でソンビが蝶を追いかけているシーンはすごく可愛いですよね。よたよた歩きの赤ちゃんみたいな感じで。
神本 そうですね。あとは、やっぱり一体のゾンビだと、そこにお金をかけられるので、特殊メイクも凝れるんですよ。安っぽいゾンビのメイクは絶対に嫌だったので、そこはかなりリアルに、と特殊メイクの方にお願いしました。
──角田さんは、そんなリアルなゾンビと実際に格闘してみていかがでしたか?
角田 でかいんですよ、あのゾンビが! でーかいんすよ!! やっぱり迫力がありましたね。あとは、格闘というのはアクションシーンじゃないですか。これまでに無い経験だったので、バットを振り回すのが、やっぱり怖かったですね。
神本 振り回すのが、ですか?
角田 うん、やるほうも怖いんだなと思いました。万が一、本当にあたったらどうしよう……とか。でも、すげえ来るし、ゾンビ!
神本 向こうも本番が始まったら本気で来ますからね(笑)。
角田 そうなんですよ!
神本 あ、僕、これ言おうと思ってたんですけど、今回、角田さんの演技を見ていて凄いと思ったが、セリフ回しももちろん良いんですけど、やっぱり動きなんですよね。角田さんがゾンビを捕まえるために家に入って行く時の全体の見え方が、すごくシックリきて。やりすぎちゃうとくさくなるけど程良い感じで、しかもコミカルなんですよ。
角田 おぉぉ~~!
神本 ビビりながらもコミカルに見える、その動きですね。
角田 はいはいはい。
神本 やっぱりコントやお笑いをやっている方は、お客さんに対して、自分が何をしようとしているのか、“笑い”という枠で見せることが必要じゃないですか。それが、この映画の中でもすごく見えたので、あ、動きもやっぱり巧いな、と感心しました。
角田 いや~いいですね~。そこも書いといてください。東京03内で飯塚さんに演技指導してもらってますから(笑)。先生がいますからね(笑)。
──コントの時も、いつもすごく良い動きをされてますものね。私が個人的に印象的だったのは、動きに加えて、角田さんの絶妙な表情でした。表情の作り方の方向性としては、例えば三上博史さんにも通じる複雑さがあるというか……。
神本 アハハハハハハ!
角田 まじすか! あんまりピンときてないですけど!(笑) いや~でもね~三上博史さんは、観て育ってきちゃってるからな~。
──なんというか、言葉で説明しがたい複雑な表情をされますよね。
神本 あー、それはわかりますよ。場面場面で微妙な表情の出し方をしているのが良かったと思います。
角田 でも僕、やりすぎてしまうことが多いので、そこが微妙なところで留まっているとしたら良かったですよ。あぶないあぶない、ギリギリのところで止められたから三上博史さんになれたんですね!
神本 (笑)さじ加減という意味ではすごく成功していると思います。
──角田さんの、そのさじ加減は、例えば今回ならゾンビ映画ですが、コントやドラマなど、その都度意識してコントロールされているんですか。
角田 いやいや。でもコントの時が自分にとっては、一番普通ですね。要は“大きくやる”というのが普通の状態じゃないですか、どちらかと言えば。それがあったので、やりすぎて迷惑をかけちゃうのはいけないなあと思いつつ、でも最初に、いつものままでいいと言ってもらったのと、6人で常に一緒にやっていたので、リラックスした状態ではいられたんですよ。あとは僕の撮影一発目が、ゾンビを見て、「ワーッ!」と二階から落っこちて来る入りだったので、そこは大声で力が入っちゃってもいいシーンじゃないですか。それで自然に撮影に入って行けたのもあると思います。最初がシリアスなシーンだったら、ヤバかったかもしれない。
神本 確かに、そうですよね。

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初主演、初監督同士……厳しかったらどうしよう、という気持ちはちょっとありました。だから、良かったですよ、初監督で助かりましたよ(笑)(角田)

──あとは今回の角田さんの役柄には、いい意味で生活感がプラスされていると感じました。
角田 あぁ、生活感ね。こういうね、ジャージとか着せればね、いくらでも出す自信はありますよ!
神本 (笑)僕は最初に衣装を決める時に、なんとなく『ロッキー』の上下スウェットのイメージがあって、あとは、はんてんがあってもいいんじゃないかな、という感じだったんです。それで衣装の方と話していたら、靴下は履かせたほうがいいと言われたので、靴下にスウェットの裾を入れたんですよ。これは、やっぱりでかかったですね。リラックス感が出て、ともさかさんとのバランスもすごく良かった。夫婦感があるというか。
角田 さすがですよね。あんなお綺麗な人がちゃんとね。
──夫婦で衣装にテイストとしてお揃い感がありましたよね。
神本 ともさかさんの役所は、最終的に主人公をゾンビ捕獲に向ける人なので、重要なキャラクターなんですが、これまでの経験とキャリアでやりきっていただいて。リハーサルの段階で台詞まわしを聞いた時に、すっかりできあがっていて驚きました。とにかくコメディのお芝居が自分のイメージ以上で面白かったです。
──役者さんは、みなさん、すごく良かったです。
神本 みんな、本当にリラックスしてやってくれていた気がしますね。
角田 現場の雰囲気が良かったですよね。
神本 殺伐としてたらどうしようかと思ってたんですけど(笑)。
角田 僕も、厳しかったらどうしよう、という気持ちはちょっとありました。だから、良かったですよ、初監督で助かりましたよ(笑)。
神本 そうですね(笑)。
──では、最後にそれぞれ初監督、初主演である『オー・マイ・ゼット!』の完成品を最初に観た時の感想で締めさせていただければと。
角田 僕はまず、自分が出て来てからは普通に見れなかった(笑)。
神本 まあ、最初はそうですよね(笑)。
角田 はい。でも、そのまま観ていくうちに、どんどんストーリーに引き込まれていきました。
神本 本当ですか? それは良かったです(笑)。
角田 テンポが良いので飽きることなく楽しく観られますよね。ぜひ、観てほしいですよね、みなさんに。
神本 観てほしいですね。何かやり残したことがあるような気もするけど、ちゃんとできたな、という気持ちもあって、自分の中ではすごく満足しています。完成した瞬間に、“ああ、俺の人生の大きな宝物だな!”と思いました。あとは何を言われても受け止めるしかないので、映画を観てください。
角田 とにかく観に来ていただく感じで!

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角田晃広(東京03)(かくた・あきひろ)/19731213日東京都出身。2003年お笑いトリオ東京03”を結成。お笑い以外にも、『男子高校生の日常』(13)、『内村さまぁ~ず THEMOVIE エンジェル』(15)などの映画やテレビに出演するなど幅広く活躍。1018日よりAbema TVでの生放送番組『東京03の若いコに好かれたいっ!!』がスタートしたばかり。

 

神本忠弘(かみもと・よしひろ)/1972228日山口県出身。大学在学中に自主制作作品『宅配人』(8ミリ)で第8回東京学生映画祭グランプリ受賞。予告篇ディレクターとしてこれまで100タイトル以上の劇場用映画の予告篇を演出。『オープン・ウォーター2』の予告では自らナレーションも担当し、フジテレビ『銀幕会議2』の番組企画で予告篇大賞を受賞。また、テレビ東京の木曜洋画劇場においてそれまでの常識を覆す独特の切り口でバカ系予告を発表。その中でもジャン=クロード・ヴァン・ダムやチャック・ノリスをいじった作品はネットユーザーの支持を獲得。


「オー・マイ・ゼット!」

Microsoft Word - オー・マイ・ゼット!_プレス.doc

11/5(土)シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国公開

配給:クロックワークスHP:http://ohmyz.com/

【キャスト】

角田晃広(東京03) ともさかりえ 森下能幸 町田マリー 柾木玲弥 萩原利久

謝花弘規 福本晟也 星野園美 声の出演/玄田哲章 間宮くるみ 恒松あゆみ 金光宣明 綾田俊樹 深水元基

【脚本・編集・監督】神本忠弘【プロデューサー】森安謙介【協力プロデューサー】若林雄介【製作】エピック【制作プロダクション】ハーフ エイチ・ピー スタジオ パイプライン【配給】クロックワークス

2016年/日本/カラー/ビスタサイズ/DCP5.1ch/90分/G

 

【STORY】

全国民を震撼させた “ゾンビパニック”勃発から5年後の日本。事態は収拾し、いまやすっかり平和を取り戻していた。そんなある日、どこからともなく現れた一体のゾンビが花田さんちに迷い込んだ。居合わせたのは、花田夫妻をはじめ、動画投稿が趣味の高校生、町工場の冴えない社長、怪しげなインターン医師、そしてゾンビの生前の妻だと名乗る女。「あのゾンビどうする?」喧々諤々の議論が繰り広げられ、すったもんだの末ゾンビ捕獲に乗り出したとき、物語は予想外の展開を見せるのだった…。人間がゾンビを襲う!? という定番の逆をいく設定で、人間たちの《滑稽で残酷なドラマ》を浮かび上がらせる。本当に怖いのは、ゾンビなのか、人間なのか──。

© 2016 epic.inc. All Rights Reserved.

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