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ペンタブレットdeアート投稿コンテスト・インタビュー【池上幸輝】

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ペンタブレットdeアート投稿コンテスト・歴代グランプリ受賞者インタビュー

14回目のコンテストでグランプリを受賞したのは「池上幸輝」さん!
第13回で銀賞、第11回では季刊エス賞と、過去のコンテストにも応募くださっている池上さん。
時間をかけて制作した受賞作品や制作時に意識していることを伺いました。

※季刊エス74号の記事を元したWEBインタビューです。

 

池上幸輝 インタビュー

【ペンタブコンテスト】池上幸輝インタビュー

第14回グランプリ受賞作品「黄昏の隙間」。
夕景の光でカゲが複雑に落ちる様子や階段のディテールなど、細かいところまで時間をかけて描いた見応えのある1枚。
銀賞以上を目指したいという意気込みが伝わってくる。


──第14回「ペンタブレットdeアート投稿コンテスト」へお送りいただいた作品の構想を伺えますか?
池上 今回の絵は銀賞をいただいた「夕暮れの駅」をどう改善しようか考えました。コンテストに出すときはいつも良い結果を獲りたいという気持ちですが、今回はあと一歩のところまで来られたので…。描きたいものというよりは、足りなかったところを見直すことを重視したんです。キャラクターがポツンといる構成や風景に密度を出して人物はシンプルにするなど、苦手なことを避けて得意な方向に寄せることを意識しました。
 

──細部まで力が入っていると感じました。制作時間もかなりかかったのではないでしょうか。
池上 他の作品や仕事の合間に少しずつ描き続けていたので正確ではありませんが、結構かかりましたね。100時間は超えていそうな気がします。例えば、2週間くらい螺旋階段の「×」印を描いていた気がするんです。描きすぎて寝るときに目を閉じても見えている…という状態になってました(笑)。

【ペンタブコンテスト】池上幸輝インタビュー

第13回のコンテストで銀賞を受賞した「夕暮れの駅」。
風合いのある駅舎とスマホを見ながら階段を降りる今っぽい少女とのギャップも味わい深い。
「季刊エス」74号のインタビューでは手元で見ているLINEの画面の作り込みについても紹介した。


──「季刊エス」74号のインタビュー記事でも紹介しましたが「黄昏の隙間」と「夕暮れの駅」は、架空の土地名が入った駅名標やビル名、同じ時間帯にスマホを見ている女の子など、“繋がりがあるかもしれない“と想像が膨らむ要素がひっそりと入れられているんですよね。
池上 そうですね。もう少し深く想像していくと、「浅戸港」とつくだけあって海が近くにあるんですよね。「黄昏の隙間」で描いたビル群の奥には山並みを描く案もありましたが、港町なら描かない方が「奥に海があるのかな?」と想像できると思って変えました。(右が完成、左が山並みを入れたイメージ)

【ペンタブコンテスト】池上幸輝インタビュー

 

──背景に加える要素は描きながら変えたり足したりするのでしょうか? ラフのときに決めていますか?
池上 絵の本題とは関係ないところは描きながら決めていきます。山は描いても描かなくてもいいんです。それを決めるための判断材料として、架空の土地名や設定が役に立ちます。僕だけが楽しいところですね。他にも絵に仕掛けた設定などもあるので、イラストレーターを続けていって、話せる機会が将来できると良いなと思っています。

──楽しみです! 池上さんの作品はゆっくり時間をかけて見たくなります。
池上 そこは自分でもすごく意識していることです。僕の絵はキャラクターがバンっと出ていたり色彩設計が優れた作品と比べると、人目を引く力は弱いと思うんです。でも自分の絵の前に来てくれた人は逃したくない、見てもらいたいと思いながら描いています。制作に時間をかける理由のひとつなので、できていたら嬉しいなと思います。

――背景の描き込みに説得力や臨場感を感じます。池上さんの活動を拝見しておりますと、スケッチも日々続けられていて、基礎の時間も大事にされている印象です。
池上 描く方それぞれに向いている方法があると思んですが、僕は無茶して進めると怪我しちゃうタイプなんですよ。失敗したり、ダメだ…と落ち込んでしまうので、積み重ねていく方法が合っていると思います。センスでパッと動けることへの憧れはありますけれど。

――自分の得意不得意を意識できるのは強みになると感じます。
池上 目標に向かって勢いよく突き進む描き方は、物語の主人公感がありますよね。「これをやるんだ!」という意思を感じます。それもカッコいいな…とは思うのですが、主人公のストーリーを進められる人は少ないのかなとも感じます。僕も昔は主人公感あふれる人物像でしたが、客観的に自分の作品を見ると描く時間もゆっくりだし、石橋を叩きまくって進んでいる、描いているのは背景…それは主人公ではないかなと(笑)。主人公らしさはないけど圧倒的に背景を描けるポジションを目指そうと開き直ったことが、背景を描くスタミナを持続できている要因かもしれません。

【ペンタブコンテスト】池上幸輝インタビュー

「季刊エス」70号に掲載した描き下ろし作品「夏の塔」。掲載したメイキング工程では臨場感のある風景の制作を解説していただきました。
夏の空に浮かぶ大きな雲と真昼の月、それを撮る女の子の姿がドラマチックな瞬間です。


――続いてデジタル作画についてもお聞かせください。高校生の頃からデジタルで絵を描きはじめた頃からペンタブレットを使用していましたか?
池上 はじめて使ったのは、Bamboo Funの緑のラインが入った機種でした。アナログ画材の経験はクロッキーをのぞいてあまりなくて、絵を描こうと思ったときがペンタブレットに触ったタイミングなんです。ペンタブレットは受賞記念で液晶ペンタブレットをいただくまで板型を使っていました。まだ液晶ペンタブレットは使いこなせていないので日頃から触るようにしていて、いまは主にスケッチを描くときに使用中です。メインで使っているのは、銀賞を受賞したときにいただいたWacom Intuos Pro Paper Edition Mediumなので、板型と液晶どちらも使っています。

──これからデジタルで描いてみたい絵の題材やモチーフ、お仕事や活動で取り組んでみたいことを教えてください。
池上 昔よりはキャラクターを描きたくなりました。描けたら楽しいだろうなと思えるようになってきたんです。自分に向いていそうなポーズ集やデッサンが載っている本を探して勉強したいと思っています。まだまだ背景も勉強不足なので強化したいです。言葉を覚えることが苦手なので背景の知識も不足しています。ノートに言葉をメモするようにしていますが、建築のルールや構造は追いきれません。描くときに毎回調べているのですが、調べるんじゃなくて覚えていきたいなと。調べる良さもありますが、身につけていかないと、と思いはじめました。とはいえ基本的にはあまり姿勢を変えることはなく、画力を向上させたいです。画力が上がれば、描きたいものも出てくると思います。


──池上さんが描く情景や世界をこれからも楽しみにしています。ありがとうございました!


池上幸輝(いけがみ・こうき)
広島県出身。イラストレーター。空や光、ビル群など架空の街や情景を緻密なタッチで描く。ヴィレッジヴァンガードやアキバ運輸でグッズのコラボも行った。現在は主にTwitterで作品を発表中。


Twitter:@winter_parasol
クリエイティアhttps://official.creatia.cc/fanclubs/47

作業環境
・PC(OS)/Windows
・描画ソフト/CLIP STUDIO PAINT PRO
・ペンタブレット/Wacom Intuos Pro Paper Edition Medium(メイン)・Wacom Cintiq Pro 24(併用)

©池上幸輝
 

【ペンタブコンテスト】池上幸輝インタビュー

女の子らしいシルエットを意識して描くという池上さん。
ボブの髪型やだぼっとしたパーカーやリュックは華奢な体とのギャップが出るので、描く機会が多いのだという。
女の子が空を眺める「なんでもない景色」もその一枚。

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【第14回】ペンタブコンテスト結果発表