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武蔵野美術大学×高校生 classwork #02 後編

02 musabi
対談・インタビュー
「季刊エス」のWEBサイトにて、武蔵野美術大学の学生が、イラストや漫画を描く高校生を訪ねる不定期連載「武蔵野美術大学×高校生 classwork」。第2回目となる今回の訪問先は、神奈川県立弥栄高等学校・美術部です。訪問するムサビ生はデザイン情報学科2年・Asagon。さん、基礎デザイン学科2年・PubiAさん、はやしなおゆきさん、そして油絵学科1年・ラジオ聴くエゴイストさんの4名です。4名ともにイラスト研究会所属です。このページでは、ムサビ生から高校生へのイラスト講評をレポートします!

ムサビ生

造形学部・デザイン情報学科2年 Asagon。さん
造形学部・基礎デザイン学科2年 PubiAさん
造形学部・基礎デザイン学科2年 はやしなおゆきさん
造形学部・油絵学科[油絵専攻]1年 ラジオ聴くエゴイストさん  
 

神奈川県立弥栄高等学校・美術部
作品講評会

このページからは、いよいよムサビ生が高校生たちの作品を見て講評コメントをしていきます。ここからは、イラストや漫画とともにコメントをご紹介します!

 

【子季さんの作品】


 

PubiA 感情やストーリー、キャラクター性がうまく伝わってきて、いい絵だと思います。

はやし 画面の外からなびく髪や、頬を掴む手から、画面の外の奥行きをすごく感じます。髪も目もすごく丁寧に描かれていて、うまいですね。

Asagon。 そうですね。画面の外に興味をそそるポイントがちゃんとつくられていて、誰の手なんだろう、誰の髪なんだろう、と視線誘導をできているので、見ていて楽しいです。一つ気になったのは、グリザイユ画法はオーバーレイでやっていますか? 色には満足していますか? グリザイユ画法ってもともとがモノクロの表現なので、突き詰めるほど色に限界がくるんです。そこでグラデーションマップを使えると、オーバーレイでなく通常モードで色をのせられるので、さらに表現の幅が広がると思います。僕もグリザイユ画法は挫折して、今はやめているので……(苦笑)。

 

 

 

【クリスプラ子さんの作品】



 

はやし 人物にこれだけ思いきった色づかいをしているのに、まとまって見えるので、色のセンスが素晴らしいと思いました。赤い顔の絵は色づかいで、青い絵は光の当たり方で、特に見てほしいという部分が、うまく見せられていると思います。ただツインテールの子は、ちょっと服の赤色が強すぎて、服だけ変に目立っている気がしますね。視線誘導をもっと意識的にできると、さらに絵が良くなると思うので、絵を縮小したり、遠くから見るなどして、全体のバランスを確認するといいと思います。

ラジオ聴くエゴイスト もう少し明度を気にするといいと思いました。縦長の構図で人物を描いていることが多いので、そういう場合は最初の段階で色面構成的に、白・グレー・黒で、まず最初に見せたい所、サブとなる所、ネガポジの関係でいうところのネガの部分を決めておいて、その白黒に合った色彩を選んで塗っていくと、人物と服のバランスがよくなるはずです。

 

 

 

【飴ちゃんさんの作品】


 

PubiA 緑色のメイドの絵はすごく好きです。赤い絵のほうはグラフィックっぽい平面的な塗り方ですが、服だけエアブラシで立体的に塗られているせいで、キャラの顔が目立たなくなっています。もし服を描き込みたいなら、もっと三角形でシワを描くなど、グラフィカルな表現にしたほうがいいかなと思います。

Asagon。 僕もメイドのほうがフェチ感が出ていて、いいなと思いました。やっぱり、描き手の性癖を出すことが、イラストを好きになってもらうために一番大事なところなので。赤い絵のほうは?

飴ちゃん これは友達からイメージをもらって描いたので、私の性癖ではないんです(笑)。
Asagon。 なるほど。赤い絵は絶対に網タイツがメインパーツのはずなのに、そこに対するこだわりが全然見えないから、あれ? と思ったんだけど、納得しました。もう一つ、隣にプロの描いたキャラクターの立ち絵を並べたらわかると思うんだけど、服に情報量が足りなくて、のっぺりしています。胸元の紐くらいしかパーツがないので、エアブラシで質感を出すんじゃなくて、パーツを足すことで情報量を増やしたらいいと思いました。


 

 

 

【うぐいすさんの作品】


 

はやし 質感の描き分けがよくできています。髪の毛に意識が行き届いていて、ツヤツヤした質感がいいと思います。それから男の子の腕に喧嘩した跡があるのも、ちゃんとシチュエーションを想像して描いていることが伝わってきて、好印象でした。

ラジオ聴くエゴイスト 描写力はあるように思いますが、描写は明暗だけでするものじゃないので、もう少し色を意識するといいんじゃないかと思いました。例えばTシャツのカゲなら、オレンジ色の補色である青・紫色を入れるなど、ハイライトやカゲも一色だけでなく、細かく色を入れることで、少ない情報量でもバリエーションを出せると思います。

 

 

 

【Yさんの作品】

 

PubiA 全体的に赤色ですが、耳の飾りに青色を入れているので、顔が引き立っていいなと思いました。線も綺麗です。私的には、エアブラシ感を強く感じたので、もうちょっと境界線は柔らかくしたりして、変化をつけたほうがいいかなと思いました。あとは筋肉質な強い男のイメージなので、手をもうちょっと男っぽくしたほうがいいですかね。

 動きのない絵ばかりになってしまうのが悩みで、動きを出したいんです……。

Asagon。 動きを描くアドバイスとしては、逆三角で構図をつくると、それだけでアンバランスになって動きが出るので、覚えておくといいと思います。あとは一次創作って、端的に言うと世界をつくること。せっかくキャラクターをつくりこんでいるので、背景があると、ああ、こういう世界のこういうキャラなんだ、と引き込まれる要素になります。これだけだと肉体美がいいね、という評価しかできないので。あとは、今まで見た人たちは全体的にそうなんですけど、頭にちゃんと厚みがあるのがいいなと思いました。

PubiA 動きを描きたいなら、写真を参考にしたり、パースをつける練習法もありますね。

 

 

 

【八坂さんの作品】

 

 

はやし めちゃくちゃうまいなと思いました。特に空の絵は一番時間がかけられていますよね? プロが描いているようなきっちりした感じがあります。色みも綺麗で個性があります。キャラクターは個人的に文句なしです。構図と背景をもう少し頑張ったら、さらによくなると思います。雲が左右対称だったり、キャラがド真ん中すぎるので、もう少し外して、奥にもタワーを描くなど、主役以外の第二、第三の見せ場をつくって、視線を動かすことを考えてもいいのかな、と思いました。なかなか難しいんですけど。

ラジオ聴くエゴイスト 全体的に色の感覚が鋭い気がします。僕も色にこだわるほうですが、水彩絵具は、筆先に水をつけた後にちょっと落とすだけでも粒子がボターッと広がってく画材なので、水と混ぜて塗るだけでなく、水でコントロールする、境界線をつくる、ということができると、さらに色みも自由になると思います。そういうことができると、今度はデジタルでもトーンカーブというツールが応用できます。

 

 

 

【月野さんの作品】


 

PubiA ケモノ耳の女の子は色がキャラに合った雰囲気でいいなと思います。オレンジジュースの絵は、ちょっとライティングやカゲの入れ方に一貫性がないことが気になりました。髪のハイライトは光源がどこなのかわからないので、絵の中で光が来る方向は統一したほうがいいと思います。ライティングはキャラの雰囲気にも影響を与えやすいので、特に気をつけたほうがいいと思いますね。それから、構図がどちらも似ているので、他にも試してみるといいかもしれません。

Asagon。 オレンジジュースの絵は、何を目的にした絵なのかがわかりにくいと思いました。キャラクターデザインにも一枚絵にもなりきれていないというか。オレンジジュースがテーマなのはわかるけれど、女の子を目立たせたいのか、オレンジジュースをプロモーションしたいのか、ちょっとわからない。例えばキャラクターの絵として見せたいのであれば、女の子はジュース部分と同化しないように、色をオレンジ色以外に変えるとか、あるいはシルエットに特徴をつけるとか、キャラクターとして目立たせる工夫が必要だと思います。

 

 

 

【方舟さんの作品】


 

はやし まず、どちらの絵もとてもお上手だし、色彩も豊かでいいと思います。それぞれの絵が、豪華な衣装だなとか、フワフワしているなとか、雰囲気を一言で言い表せるのもいいと思います。ほぼ文句なしです。ちょっと気になったのは、物には方向性があるんですけど、その最たるものが目線なんです。例えば、この招き猫の絵の場合、キャラクターが左を向いていると、鑑賞者の目線も左に行くのですが、その目線を受け止めるスペースが無いんですよね。単純な話、この女の子が逆向きだったりすると、そこは改善される。視線の先に余白がないことで、少し絵が窮屈になっているのが惜しいと思いました。

ラジオ聴くエゴイスト 僕も基本的には、はやしさんと同じ意見です。物の描き込みは、細かくできているなと思います。僕が気になったのは、コンポジションというか、物と物との関係です。例えばキャラクターとそれ以外の背景の距離感は、どのぐらいなんだろう? とか。それは例えば、魚が女の子に少し重なっているだけで、魚が前にいて、女の子が後ろにいることがわかる。あるいは、どれか、ぬいぐるみを一個持っているだけでも、この部屋の中にこの女の子がちゃんといるんだ、という存在感は出る。陰影をめちゃめちゃ付けなくても、物と物との関連性だけで、キャラクターを立たせることはできるんです。物ごとにレイヤーを分けていたら、最後にその辺りを検討するだけで、絵がよくなるんじゃないかと思います。

 

 


というわけで、第2回目はムサビ生と神奈川県立弥栄高等学校・美術部の生徒さんとの放課後の交流をお届けしました。今後も、様々な高校生のもとへムサビ生が訪ねてゆきます。これから美大進学を考える中高生はぜひ参考にしてみてくださいね。次回もお楽しみに!