【第5章】司祭さん


荒地の皇帝に責任と計画性を見せてもらったFOOLは、もっとこの世の仕組みを知りたくなってワクワクし始めました。
それには、もっといろんな人のいる場所に行こうと、ある街にたどり着きます。街の中には、ひときわ大きな建造物があり、中に入ってみることにしました。高い天井と立派な柱、赤い絨毯が敷かれた建物は寺院と呼ばれ、奥の高い壇上の人物が、壇下でかしずく人達に丁寧に何かを教えています。壇上の人物は、森の賢者と呼ばれるフクロウの顔をしており、賢そうです。司祭様と呼ばれるこの方なら、自分にも何か教えてくれそうだと、頭頂部を剃ったハゲワシ頭の二人の後ろに並び、司祭にたずねました。

「私はここにいたら何を教えていただけるのでしょうか」
「そうですね、私はあなたにいろいろな伝統、宗教、価値観の違いや、常識とルール、そして世の中があなたに何を求めているかを教えることはできます。ですが重要なのは、あなたの価値観、使命、生きがい、信じたいもの、それらは自分で決めて、そして自ら探究していかなくてはいけません」
司祭様は、やさしく微笑みながら続けます。
「学びたい、学ばなくてはと思うタイミングというのは、自分の今までの生き方、行動を見つめ直し、必要であれば、自分をブラッシュアップする、それができるタイミングがきているということです。価値観は生きている限り、うつろっていくもの。それはあなたが、ちゃんと人生を歩み、経験から学んだ足跡とも言えるでしょう。また、そのタイミングで、過去の過ちや失敗を恥じる必要もありません。かつて輝いて見えたものが色あせたり、よりどころにしていたものが揺らいだとしても、それもまた、今世であなたの魂が経験したかったことの一つなのです。伝統や常識が時を経て、非常識に変わることがあるように、いま私は、現行の常識をあなたに伝えることはできますが、それも、変容する可能性があるという認識を持って学んでくださいね。また、自分にとってはこれは違う!ということがあっても、まずは強固につっぱねるのではなく、柔軟な姿勢、そういう考え方もある、くらいに捉えると、たくさんの知識を受け取ることができますよ」
FOOLは、その押し付けがましくない懐の深い見解に感銘を受け、しばらく司祭の寺院でお手伝いをしながら勉強させてもらうことにしました。能天気な生活をしてきた自分、もちろんそれだって悪いことではありません。そこからさらに人生を豊かするには、自分の価値観や主義を持ちながらも、外から与えられたアドバイスとどう向き合っていくかだと知りました。


5番・司祭/THE HIEROPHANT
このカードのキーワード

そのときに得た学びを鵜呑みにするのではなく、
自分らしくいるための軸を整えながら、
心の腑に落ちるようできるかどうか。
柔軟な姿勢がキモですね。

絵と文|D[di:]
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